風邪気味の時は、乳幼児には近づかない! 風邪気味の時は、乳幼児には近づかない!
国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年第32週(8/5-11)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は1.45。前週から17.1%ほど減少しています。前週からは、減少がみられるものの九州・四国地方では一定の患者報告があがっています。
都道府県別にみると、高知県(5.12)・大分県(4.19)・山形県(4.67)・新潟県(3.85)・岩手県(3.55)・愛媛県(3.79)・鹿児島県(3.65)となっています。RSウイルス感染症は、乳幼児…特に生後1か月未満の子どもが感染すると突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあるなど、注意が必要な感染症です。今回は、お子さんがRSウイルス感染症と診断された方の経験談をご紹介します。

【2024年】8月に注意してほしい感染症!新型コロナ8月末に向け増加の予測 医師「患者の受け入れ態勢限界迎えつつある」 RSウイルス感染症・インフルエンザの動向要注視

2歳 鳥取県

1日目、朝体が熱い為検温、37.6℃あり。小児科受診、風邪の診断。
保育園で流行っているものはないと伝えたが、後でホームページを見るとコロナ、RS、手足口病の子がいる事を知る。38℃台になる事はあるが機嫌は良く元気。
2日目、変わらず37℃台38℃台を行ったり来たり。機嫌もよく元気。痰絡みの咳、鼻水
3日目、母も喉がイガイガする。この日は咳も多く、横になる事が多い。39.5℃まで上がる。小児科受診、RS陽性。点滴してもらう。熱下がらず夜も咳で苦しそうだったら明日も受診して下さいとの事。薬拒否、ご飯も食べずゼリーやブドウを食べるが咳がよく出て辛そう。気管支を拡げる薬を貼る。20時過ぎには寝る、39.3℃→今ここです。
去年の今頃もRSにかかり、その時は肺炎になり1週間入院しました。明日もしんどそうだったら受診予定です。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「経験談をお寄せ頂き、ありがとうございました。RSウイルス感染症は、咳などの気管症状が中心で、それほど高熱が出ないと以前は言われていましたが、個人差はあるものの、最近では、高熱が出るケースもあります。0歳児は、特に注意してほしい感染症ですが、お寄せ頂いた方のお子さんは、2歳という年齢に加え、初回感染では無いことも、症状がそこまで重くならなかった要因だと考えられます。直接診察したわけではないので、よく分からない部分もありますが、RSウイルス感染症がきっかけで、喘息が引き起こされることもあります。お子さんの体調の変化には、注意してあげてください。RSウイルス感染症の流行が、なかなか減り切らないことが、2024年の患者報告数の動向をみても分かります。大阪府など、関西圏では、春に流行しましたが、九州地方・東日本など、春に流行をみせなかった地域は、これから流行する可能性を否定できません。今後、特に関東地方は、注意が必要でしょう。気がかりなのは、ダラダラとした長期間の流行になっていることです。2023年のインフルエンザも、長期間に渡り、流行が続いたため、患者報告数が多くなりました。今後の流行の時期・規模についての予測は困難ですが、同様のことが、RSウイルス感染症でも起こらないか、注意が必要です。小さなお子さんがいらっしゃる方は、幼稚園・保育園などで流行していないかも気にかけてください」としています。

RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染するとされています。症状としては、発熱や鼻汁などの軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。初回の感染時にはより重症化しやすいといわれており、特に生後6か月以内にRSウイルスに感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。

乳幼児の感染には要注意!

RSは生涯にわたって感染を繰り返しますが、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。また、成人では通常は感冒用症状のみです。初感染の乳幼児においても約7割は鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに警戒しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現します。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

RSウイルスの感染経路は?

RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染する接触感染。あるいはRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散る飛沫を浴びて吸い込むことによる飛沫感染で広がります。乳幼児に関しては、周りの大人やきょうだいから感染することが多く、風邪のような症状があるときには乳幼児になるべく近づかないなどの配慮が必要です。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年31週
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏