小中学生など子どもを中心に流行! 小中学生など子どもを中心に流行!
国立感染症研究所の2024年第31週(7/29-8/4)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」定点あたり報告数は0.95。これで5週連続の増加となりました。この報告数は、以前大きな流行があった2012年、2016年と同程度の高い水準となっています。いずれの年も夏以降さらに患者数は増え、秋ごろにピークを迎えました。今年もこれから秋に向けて流行が拡大するおそれがあります。

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マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」に感染することによって起こる呼吸器感染症です。肺炎マイコプラズマは、自己増殖が可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類されています。小児や若い人の肺炎の原因としては比較的多いものの一つで、例年患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告も見られます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられますが、冬にやや増加する傾向があります。

感染経路は?

感染は飛沫感染が多く、患者のせきの飛沫を吸いこんだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2〜3週間くらいとされています。

症状は?

発熱や全身けん怠感(だるさ)、頭痛、たんを伴わない咳などの症状がみられます。せきは少し遅れて始まることもあります。咳は熱が下がったあとも長期にわたって(3〜4週間)続くのが特徴です。多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となり、重症化することもあります。一般に、小児の方が軽くすむといわれています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「マイコプラズマ肺炎は、2023年に中国や韓国で大きな流行が起きたのが話題になりましたが、2024年は我が国でも流行が本格化すると予測しています。今年に入り、マイコプラズマ肺炎患者を診察しましたが、初発症状は、発熱、頭痛、倦怠感。次いで、症状発現から3-4日目で咳が出てくると言った傾向がありました。もちろん、症状に個人差はあります。感染力は、それほど強くはなく、比較的近い距離で長時間接しないと感染しないので、感染はゆっくりと拡大していきます。しかし、現在、定点報告数は、右肩上がりに伸びており、このままいくと、さらに流行は拡大し、秋ごろにピークを迎えるのではないかと予測しています。発症者は5歳から15歳ぐらい、保育園や幼稚園の年長、小学生、中学生などが中心で、家庭内や教室などで感染が起こりやすいと言えるので、夏休みが終わり、2学期が始まると、患者数も増加するでしょう。マイコプラズマ肺炎は、夏季オリンピックがあった2012年、2016年と4年おきに大きな流行があり、2020年にも大きな流行が起こるかと見ていましたが、新型コロナウイルスの流行が起き、マイコプラズマ肺炎の流行はありませんでした。ですので、多くの人がマイコプラズマ肺炎にかかりやすくなっていると思われます」としています。

予防法は?

飛沫感染はインフルエンザや新型コロナなどでも起きるので、同じ感染対策が有効です。普段からの手洗い、そして部屋の換気。患者の咳から感染するので、咳の症状がある場合にはマスクを着用するなど、咳エチケットも重要です。

治療には抗菌薬(抗生物質)が有効だが、耐性菌が増えている

治療には抗菌薬が有効ですが、近年マイコプラズマ肺炎に通常使用されている抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えてきているとされています。
安井医師は「大阪府の病院レベルでの報告で、公的機関が出したデータではありませんが、耐性菌について、医師も想定しておかなければならない状況が現れています。マイコプラズマ肺炎の治療には、通常、マクロライド系の抗菌薬が用いられますが、それが効かない耐性菌の出現が、一部の病院で報告されています。先日、私の勤務先に入院された10代の方も、かかりつけ医で検査したところ、マイコプラズマ肺炎と分かりました。しかし、投与されていたマクロライド系の抗菌薬でよくならなかったため、私の勤務先に、入院し、耐性菌に効果のある別の薬を投与したところ、快方に向かいました。耐性菌の場合でも他の抗菌薬で治療が可能ですので、早めに医療機関で診断を受けて、適切な治療を受けることが重要です」と語っています。
また、安井医師の勤務する病院では、3歳の子どもがマイコプラズマ肺炎で入院例もありました。耐性菌については、小さなお子さんの場合、使える抗菌薬の種類が限られてきます。早めに医療機関を受診することが重要です。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第31週(7/29-8/4)、マイコプラズマ肺炎とは
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏