帯状疱疹は、特に50歳を境に発症率が急上昇します。今回、『感染症・予防接種ナビ』に寄せられたのは、耳内と喉の帯状疱疹の発見が遅れ入院。その後も2年半に渡り後遺症に悩まされていると言う京都府在住の61歳の方からの経験談です。
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帯状疱疹経験談 61歳 京都府
日曜日あたりから喉の痛み、そのたぐいの風邪が多いのでてっきりそうだと思い早めの月曜日に内科を受診。「喉が少し赤いかな…」くらいの診断にて風邪薬を貰うも次の日には食べられないほどの喉の痛みに。耳の調子もおかしく火曜日の夜耳鼻科を受診。扁桃炎と風邪からの中耳炎…との診断にて、その日から吸入に通うも症状は悪化。通院四日目あたりに耳から嫌な液体が…。 医師が慌ててファイバーで見て「あっ…これは…」その時にはもう声もまともに出ず、何も食べることが出来ませんでした。慌てて総合病院に電話する医師。即向かうように言われ、行った病院で 帯状疱疹だとわかりました。総合病院では、「こんなになるまで気づかれなかったの?!」と驚かれました。しかも、たぐいまれな喉の中にできる帯状疱疹。病状はあっという間に悪化の猛スピード。即入院の次の日からは嚥下機能がマヒ、10日間の鼻から胃へのチューブで食事。体は熱もないのに極度の疲労倦怠感でトイレにも車いす。検査にもストレッチャー。3週間の入院でやっと嚥下機能はギリギリ戻りましたが声はいわゆる「嗄声」かすれて人に聞えないくらいが半年間続きました。食事もしばらくは柔らかいもの、何とかすべての見込めるようになった今も、食べ始めから5分間近くは咳き込みが激しく、まだコロナやインフルがはびこっている世の中、知らない人の居る場所では気が引けます。声は半年で何とか8割がた戻りはしましたが、帯状疱疹がこの2年半過ぎた今も後遺症で残り続けるなんて思いもしませんでした。今も仕事中、食事中、就寝中…。場所タイミングを問わず咳き込みがあります。あまり症例が少ない、外部には出ない喉の中 そんな帯状疱疹を知っておいていただきたいと投稿しました。帯状疱疹は、耳鼻科 医師の中でも知識はあるけれど、本当に出会った事はないという先生も多いようです。風邪かもと油断をせず、喉の痛みが急速に激しくなるような場合は疑ってみてください。一生こんな後遺症と付き合って行かなくてはならないかもしれません。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「直接診断した訳ではないのですが、経験談をお寄せ頂いた方は、本当に大変だったのだろうと思います。我々、医療に携わる者として、今後の診療の参考にしたいケースです。勇気を出して投稿くださり、ありがとうございます。非常に珍しい症例であることに間違いないと思います。発症当時は、外部に発疹などが見当たらないことから、はっきりと診断できなかったのだと考えられます。帯状疱疹と分かれば、治療も始められるのですが…。お寄せ頂いたケースは、即入院治療が必要なケースです。首からの上は、神経が集まっているため、なめてかかると非常に危険です。入院時も、嚥下できないなどで、ご苦労されたと思います。また、後遺症も、少しづつよくなったようですが、完全に回復するかどうかは、個人差があります。一日も早い回復を願っております。今回の経験談、非常に参考になりました。今後の参考にしたいと思います」としています。帯状疱疹の特徴
帯状疱疹は、かつて水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも発症の可能性があります。加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍、免疫抑制状態などをきっかけに、神経節に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化することによって発症します。水ぼうそうにかかったことがある人なら約10〜30%、85歳以上の方は約50%が帯状疱疹を経験しているという報告もあります。症状としては体の片側に、時に痛みを伴う水疱状の発疹が発生します。通常発症する部位に、発疹が出現する2〜3日前からかゆみや痛みが発生します。その後、3〜5日間にわたって発疹が現れ、かさぶたになるまでには10〜15日ほどかかります。また、発疹が治っても帯状疱疹後神経痛といって、発症した部位の痛みが長く続くことがあります。帯状疱疹が増えている要因
また近年、帯状疱疹が増加しているという話をよく耳にします。それについて安井医師は、「帯状疱疹が増えている原因の一つに、水ぼうそうの患者が激減したことがあると思います。現在水ぼうそうのワクチンは定期接種となっており、子どもたちが水ぼうそうを発症することは大変少なくなりました。ただしそのことにより、かつて水ぼうそうにかかったことがある人たちも水痘帯状疱疹ウイルスに接することが少なくなりました。それまではウイルスに接することで免疫が維持されていたのですが、ウイルスに接する機会が少なくなったとで、免疫が弱まっている可能性もあるのではないかと考えています」と語っています。帯状疱疹の予防には、帯状疱疹ワクチンの接種を
帯状疱疹の予防には、帯状疱疹ワクチンが有効です。50歳以上になると帯状疱疹のリスクが高まるので、接種を検討してみてはいかがでしょうか。帯状疱疹ワクチンは2種類あります。また、接種費用の補助が出る自治体もあるので、詳しくはかかりつけ医などにご相談ください。
引用
国立感染症研究所:帯状疱疹ファクトシート(2017年2月10日)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏
国立感染症研究所:帯状疱疹ファクトシート(2017年2月10日)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏