風邪気味の時は、乳幼児には近づかない! 風邪気味の時は、乳幼児には近づかない!
国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年第28週(7/8〜14)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は1.84。4週連続で増加しています。都道府県別の定点あたり報告数は、宮崎7.06、長崎6.34、佐賀6.30、鹿児島5.63、福岡5.53、愛媛4.72、高知4.28など、西日本で多くなっています。

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RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする、乳幼児に多くみられる急性呼吸器感染症です。主な感染経路は、患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手指や物品等を介した接触感染です。生後1歳までに50%以上の人が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染し、何度も感染するとされています。
初感染の場合は発熱、鼻汁などの上気道症状が出現し、うち約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現するとされています。乳幼児のおける肺炎の約50%、細気管支炎の約50〜90%の原因がRSウイルス感染症と考えられています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「RSウイルス感染症は今年の春に近畿地方を中心に流行しましたが、今は九州地方や中四国の一部の県を中心に、西日本で流行しています。RSウイルス感染症は乳幼児が発症しやすい感染症で、急激に流行することはありませんが、じわじわと拡がっていきます。去年や2021年にも夏の流行がありましたし、8月から9月にかけて流行がさらに拡がっていくのではないかと気がかりです。RSウイルス感染症は、乳幼児にとっては重症化する可能性もあり、新型コロナウイルス感染症よりも注意すべき感染症ですので、警戒が必要と考えています」と語っています。

早産の新生児、基礎疾患を持つ高齢者などは重症化しやすい

RSウイルス感染症は早産の新生児や、早産で出生後6か月以内の乳児、月齢24か月以下で免疫不全を伴う、あるいはダウン症候群の子どもは重症化しやすいとされています。また、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者では、肺炎の合併が認められることが明らかになっています。RSウイルスには特効薬がなく、重症化した場合の治療は、酸素投与、輸液や呼吸管理などの対症療法が主体となります。流行の拡大によって、重症化する人が増えることが懸念されています。

限定した対象に対し、抗体製剤やワクチンが承認を受ける

RSウイルス感染症の重症化予防のため、早産児、気管支肺異形成症や先天性心疾患等を持つハイリスク児を対象に、ヒト化抗RSV-F蛋白単クローン抗体であるパリビズマブの公的医療保険の適用が認められています。また、乳幼児を対象としたヒト化抗RSV-F蛋白単クローン抗体製剤で、より長期間の効果が期待できるニルセミマブが2024年3月に承認を受けました。一方、60歳以上のハイリスク者を対象とした組み換えRSウイルスワクチンが2023年9月に承認を受け、さらに、移行抗体による乳幼児の感染予防を目的とした、妊婦を対象とする組み換えRSウイルスワクチンが2024年1月に承認を受けました。同製剤は2024年3月に60歳以上を対象とする適応追加の承認を受けました。

家族間の感染に注意!風邪気味の時は乳幼児に近づかない!

とはいえ、これらの薬やワクチンは対象が限定されています。一番心配な乳幼児への感染は家族からのケースが多く、家庭内での予防が重要です。大人や年長児は再感染しても症状が軽く、感染に気が付かないケースがあります。少しでも風邪のような症状がある時には可能な限り乳幼児との接触を避けることが乳幼児の発症予防につながります。

接触感染対策、飛沫感染対策

接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤などで消毒し、流水・石けんによる手洗い、またはアルコール製剤による手指衛生が重要です。飛沫感染対策としては、鼻汁・咳などの呼吸器症状がある場合は、マスクが着用できる年齢の子どもや大人はマスクを使用することが大切です。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年第28週(7/8〜14)、IDWR2024年第15号〈注目すべき感染症〉RSウイルス感染症
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏