【7月に注意してほしい感染症!】新型コロナ徐々に増加 夏の感染症「手足口病」警報レベルのエリアも… 医師「マイコプラズマ肺炎、今後、更に増加」と予測
【No.1】新型コロナウイルス感染症
最も、注意して頂きたい感染症に、新型コロナウイルス感染症をあげました。昨年同週の流行状況と比べると、定点あたりの患者報告数は、下回っていますが、2024年5月の大型連休明けから6月末時点で、増加傾向にあります。現在、KP.3と呼ばれる新たな株が流行をみせていますが、KP.3はオミクロン株の一種で、以前に流行したBA2.86から派生した株です。ワクチンや感染による中和抗体による免疫からの逃避の可能性が高く、感染しやすいというBA2.86の特徴はそのまま引き継いでいるものと思われます。また、発症しても症状には大きな違いはないと考えられます。2023年5月から、5類に移行し、一年余りが経過しました。現在、入院される方は少なくなったものの、症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。これから気温が高くなる季節を迎えますが、室内の換気など、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。2024年6月末時点で、沖縄県ではピークアウトの兆候がみられますが、全国的には、徐々に増えつつあります。例年通りであれば、梅雨明け頃から増加し、夏の流行を迎えると予測しています。KP.3の関連株が夏の流行の中心になると考えられます。流行の規模などは、予測できませんが、注意が必要と考えています。【No.2】手足口病・ヘルパンギーナ
手足口病は、エンテロウイルスなどを病原体とする感染症で、流行は夏に集中しています。2024年6月末時点で大きく増え始め、気がかりな感染症です。症状の経過については、3日から5日の潜伏期間の後に発症し、口の粘膜・手のひら・足の甲や裏などに、2~3ミリの水疱性の発疹が現れます。手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育園や幼稚園などの乳幼児施設における流行時の感染予防は、手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。喉からウイルスが排出されるため、咳をしたときのしぶきにより感染します。感染者との密接な接触を避けることや、流行時にうがいや流水石けんでの手指衛生を励行することが大切です。同じウイルス属のヘルパンギーナも、例年、5月頃より増え始め、7月頃にピークを迎えます。喉からウイルスが排出されるため、咳をしたときのしぶきにより感染します。感染者との密接な接触を避けることや、流行時にうがいや手指の消毒を励行することが大切です。一方で、手足口病・ヘルパンギーナともに個人差はあるものの疾患のインパクトについては、そこまで大きくならないケースが多いです。しかし、口腔内の水疱が破れ痛みを伴うため、食事の摂取や水分補給ができないお子さんもいらっしゃいます。気温の高さもあるため、脱水症状などにはじゅうぶん注意してください。【No.3】咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症)
咽頭結膜熱の患者報告数は、2023年12月に、過去最高の流行をみせました。感染症の動向を、長年に渡り調査・分析していますが、このような動きは、今までありませんでした。夏に流行する感染症であり、徐々に増加をみせており注意が必要です。咽頭結膜熱は、アデノウイルスを原因とする感染症です。症状は風邪とよく似ていますが、発熱、咽頭痛、結膜炎です。発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。最近では、アデノウイルスの検査キットが普及したことも手伝い、発熱・咽頭痛・結膜炎の3つの症状が一度に出ない場合は、咽頭結膜熱ではなく、「アデノウイルス感染症」と診断されることもあります。感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。【No.4】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、学校・幼稚園・保育園などでの流行が多くみられます。幼稚園・保育園・小学校など集団生活の場で、流行することなどから、注意が必要です。患者報告数も、2024年6月末時点でも、高い水準を維持しています。7月も、一定程度の報告数が出てくるものと予測していますが、全国的にピークに達している兆候もみられます。夏休み期間前までは、じゅうぶんな警戒が必要です。溶連菌感染症は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。また、溶連菌の高い流行水準に伴い、『劇症型』に罹患する方も増加しています。詳しい感染経路は不明な場合が多いですが、飛沫・接触だけでなく、傷口などから感染するケースも報告されています。実際に、入院された方の報告を目にする機会があったのですが、出産後の産道の傷から感染したとみられる方もいらっしゃいました。注意が必要です。【No.5】マイコプラズマ肺炎
別名、オリンピック病と呼ばれ、4年に一度、オリンピックの年に流行すると言われています。しかし、前回の東京オリンピック開催予定年であった2020年は、コロナ禍で流行することはありませんでした。2024年に入り、徐々に患者数の報告が増えており、今年は流行すると予測しています。7年間ほど流行していなかったため、流行すると入院される方も増加します。秋口あたりから、本格的な流行に移行する恐れもあり、注意が必要です。マイコプラズマ肺炎とは、肺炎マイコプラズマを病原体とする呼吸器感染症です。飛沫感染による経気道感染や接触感染によって伝播すると言われています。感染には濃厚接触が必要と考えられており、保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられますが、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くはありません。潜伏期間は、2~3週間とインフルエンザやRSウイルス感染症等の他の小児を中心に大きく流行する呼吸器疾患と比べて長いです。初期症状として、発熱、全身倦怠、頭痛などが現れた後、特徴的な症状である咳が出現します。初発症状発現後3~5日から始まることが多く、乾いた咳が経過に従って徐々に増強し、解熱後も長期にわたって(3~4週間)持続します。抗菌薬投与による原因療法が基本ですが、「肺炎マイコプラズマ」は細胞壁を持たないために、β-ラクタム系抗菌薬であるペニシリン系やセファロスポリン系の抗生物質には感受性はありません。蛋白合成阻害薬であるマクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)が第1選択薬とされてきましたが、以前よりマクロライド系抗菌薬に耐性を有する耐性株が存在することが明らかとなっています。近年その耐性株の割合が増加しつつあるとの指摘もあります。最初に処方された薬を服用しても症状に改善がみられない場合は、もう一度医療機関を受診していただくことをお勧めします。感染症に詳しい医師は…
大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「7月に最も注意してほしい感染症は、新型コロナウイルス感染症を挙げました。沖縄はいったんピークをつけた動きをしていますが、全国的には、引き続き注意が必要でしょう。そのほか、手足口病や咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症)など、夏の感染症が伸び始める時期となりました。お子さんをお持ちのご家庭では、お子さんの体調の変化に気を付けながら観察してください。またマイコプラズマ肺炎の患者報告数が、着実に伸びています。発熱・咳・肺炎症状と、罹患すると大人でも辛い症状が出ます。注意してください」としています。
監修・取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏