半年以上前に更新された記事です。

今後の流行に注意 今後の流行に注意
国立感染症研究所の2024年第18週(4/29-5/5)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は0.51。前週の0.7から減少しました。前週から、減少しているようにも見えますが、第18週は、大型連休の影響で、医療機関がお休みのため、実際に減少しているかの判断は難しいところです。都道府県別では、北海道(1.18)・岩手県(2.13)・山形県(1.11)・鳥取県(1.32)となっています。今回ご紹介するのは、大型連休中に、アデノウイルスと診断された、静岡県の34歳の方の経験談です。

【2024年】5月に注意してほしい感染症!RSウイルス感染症全国的に本格的増加 麻しん(はしか)流行に注意 医師「GW明けに注意」

アデノウイルス感染症経験談 34歳 静岡県

4/30仕事休みの為、家でゆっくり過ごす。夕方頃から身体のだるさを感じ、熱を測ると38.3℃ 上司に休みの連絡をする。
5/1近くの町医者にて受診、コロナ、インフル陰性。外に出て新鮮な空気を吸ったのか受診前に飲んだコロナ時の解熱剤もあり熱も37℃に落ち着く。頭痛はひどいものの自分も風邪だと思い、検査せず風邪薬処方され帰宅。
5/2朝から喉の痛み、はれ、頭痛、38℃の熱でかなりしんどくなる。薬飲んでも一時的で効かず。喉の痛みで水を飲むのもしんどく、唾も飲み込めず夜寝られない。
5/3症状改善せず37℃~38℃台を行ったり来たり。この頃から頭痛はなくなり、代わりに目ヤニ、咳が出て酷くなる。唾も痰も出て、飲み込む痛みがひどくお手上げ状態。この頃からただの風邪ではないとようやく気づく。
5/4土曜日のため、人がいなく休めないので、仕事に出なければならなくなる。薬と外の新鮮な空気のためか37℃に落ち着くが咳の為マスクを二重にする。倦怠感強い。
5/5安静にしていても一向に良くならないため翌日の病院受診を決意。症状変わらず。
5/6別の病院を受診してアデノウイルス感染症と診断。新しい薬、目薬処方してもらう。経過日数からあと2.3日すれば良くなると話してもらう。すぐ家に帰って死ぬように寝る。
5/7ようやく熱下がり始め、目ヤニ、喉の痛みも引いてくるが、咳が酷い。
時系列にするとこんな感じです。まず水を飲むのもしんどく、喉のスプレーを市販で買いましたが20分もかからずまた咳、痰、痛み出ます。そのおかげで2時間寝ては咳で起き、スプレー、うがい、のど飴、スポーツ飲料で対処を繰り返すため寝不足に。
コロナと違い味の変化はほぼなく食欲ありました。何処で感染したのかは分からず、職場でも一日中マスクしてます。入院すらしたことないですが、経験上コロナより酷い1週間でした。まだ症状良くなってません。明後日には人いないから出勤してくれと上司に頼まれてます。本当は行きたくありません。

感染症に詳しい医師は…

大阪府済生会中津病院院長補佐で感染管理室長の安井良則医師は「大型連休中に、大変な思いをされただろうと思います。その後の症状が、回復されていることを願っております。今回の経験談も、直接診断したわけではないですが、お寄せ頂いた内容から、咽頭結膜熱の症状だと考えられます。咽頭結膜熱の原因となる、アデノウイルスによる感染症は、高熱が続き、喉が痛む、目の充血など様々な症状を引き起こします。感染力も強く、接触感染も考えられるため、感染経路の特定は困難です。また、長期間に渡って、ウイルスを輩出し続ける場合もあるため、しんどい時は、むやみに出歩かず、安静にしておくのが一番です。本人の体調のためもありますが、周囲を感染させてしまう恐れもあります。そして、アデノウイルスが原因の肺炎も珍しくはありません。肺炎になると、症状が長引く場合もあるため、無理をしないでください。職場の上司の方も、ぜひ知っておいて頂きたいです」としています。

咽頭結膜熱とは?

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39℃の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。

咽頭結膜熱の予防法は?

咽頭結膜熱の予防としては、感染者との密接な接触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒を励行することなどがあります。消毒法に関しては、手指に対しては流水と石けんによる手洗い、及び90%エタノール、器具に対しては煮沸、次亜塩素酸ソーダを用います。消毒用エタノール(80%程度)の消毒効果は弱いとされています。感染力が強いためにタオルなどの共有は厳禁です。多くの人がさわるドアノブ、スイッチから感染することもあるので、流行時には消毒をする必要があります。保育所などではおもちゃの消毒も有効です。また幼児の感染が多い咽頭結膜熱ですが、治癒後も長時間、便のなかにウイルスが排出されることがわかっています。排便後、またはおむつを取り替えたあとの手洗いは石鹸を用いて流水で丁寧に行うことが重要です。

結膜炎など眼に症状がある場合は、眼科を受診

咽頭結膜熱の主な症状は、発熱、ノドの痛み、結膜炎です。安井医師は、「咽頭結膜熱の症状は、まず発熱があり、続いてノドの痛み、結膜炎を発症するとありますが、どの症状が強く出るのかは人それぞれです。特に眼の症状は小児科や耳鼻咽喉科では診られませんし、アデノウイルスの流行時期には別の血清型のウイルスが原因の『流行性角結膜炎』の場合もあるので、早めに眼科を受診する必要があります」としています。流行性角結膜炎で角膜に炎症が及ぶと透明度が低下し、混濁が数年に及ぶことがあります。また新生児や乳幼児では偽膜性結膜炎を起こし、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こすことがあるので注意する必要があります。異変を感じたり、気になる症状があるときは、迷わず医療機関を受診しましょう。

引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2024年第18週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」「流行性角結膜炎とは」
厚生労働省:咽頭結膜熱について

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏