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国立感染症研究所の2024年第16週(4/15-21)の速報データによると、梅毒の報告数は、全国で185例があがっています。今年に入ってからの累積患者数は3904人となっています。
昨年の同週比で、やや下回るペースですが、多くの患者報告があがっており、注意が必要なことに変わりはありません。梅毒については、地方自治体の保健所などが、匿名・無料で検査を行っているケースも多くあり、即日、検査結果が出る場合もあります。しかし、自宅の近所や勤務先近くの医療機関での受診となると、思わず躊躇する方もいらっしゃるかも知れません。そのような場合、どのようにすればいいのか、医師と行政機関を取材しました。

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梅毒とは?

梅毒とは、主に性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接すること)などによってうつる病気です。梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症で、梅毒の病変部位と直接接すること、具体的には、性器と性器、性器と肛門、性器と口の接触などでうつります。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。また、妊娠している人が梅毒にかかると、流産や死産を招いたり、赤ちゃんが梅毒にかかった状態で生まれる先天梅毒になることがあります。決して軽く考えてはいけない感染症です。

症状

感染したあと、経過した期間によって、症状の出現する場所や内容が異なります。
<第Ⅰ期:感染後約3週間>
初期には、感染がおきた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。痛みがないことも多く、治療をしなくても症状は自然に軽快します。しかし、体内から病原体がいなくなったわけではなく、他の人にうつす可能性もあります。感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められます。
<第Ⅱ期:感染後数か月>
 治療をしないで3か月以上を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹が出ることがあります。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」とよばれています。発疹は治療をしなくても数週間以内に消える場合があり、また、再発を繰り返すこともあります。しかし、抗菌薬で治療しない限り、病原菌である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。アレルギー、風しん、麻しん等に間違えられることもあります。この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器の障害につながることがあります。
<晩期顕性梅毒(感染後数年)>
感染後、数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、晩期顕性梅毒に進行することはほとんどありません。また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)。

感染経路

主な感染経路は、感染部位と粘膜や皮膚の直接の接触です。具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)等が原因となります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は
「梅毒の検査では、過去の感染歴と、現在、治療が必要かどうかを調べます。一昔前は、過去の感染歴も含め陽性が出るケースは、80-90代が多かったのですが、今は、若い方も、多いです。新型コロナ流行時に、若い女性の方の入院前検査を実施したところ、梅毒の陽性が出たケースもありました。男性が注意するのは、もちろんのこと、女性も注意してください。特に妊娠している女性が梅毒に感染すると、母親だけでなく、胎盤を通じて胎児にも感染することがあります。その結果、死産や早産になったり、生まれてくる子どもの神経や骨などに異常をきたすことがあります。生まれた時に症状がなくても、遅れて症状が出ることもあります。検査をして早期発見を心掛けてください。そして、梅毒は、治療できる病気です。症状などに、心当たりのある方は、早めに検査を受け、治療が必要な場合は、皮膚科などの医療機関を受診してください」としています。

住所近くの医療機関受診にためらいがある場合は…

一方で、検査で治療が必要と判断された場合に、自宅近くなどの医療機関を受診することに、ためらいを覚える方もいらっしゃると思います。広島県では、患者さんのプライバシーに配慮しながら、治療に向けた取り組みを行っているとのことです。広島県感染症・疾病管理センターは、「広島県管轄の保健所では、梅毒を広げないため、地域の医療機関の協力を仰いでおり、検査で治療が必要と判断された方には、ご本人と相談し、住所地の最寄りの医療機関だけでなく、住所地・勤務地などから離れた医療機関で、治療に取り組めるようにしています。保健所での検査を受ける場合は、心当たりのある接触から3ヶ月を経過してからになります。既に、症状が出ている場合は、すぐに医療機関を受診するようお願いしています」としています。

まとめ

梅毒に心当たりがある方は、早期の検査・治療が大切です。地方自治体の保健所の中には、検査の結果、治療が必要と判定された場合に、地域の医療機関と連携しながら治療できる取り組みを進めているところもあるようです。住所地近くなどでの受診にためらいのある方は、検査の後に、地方自治体の窓口や保健所に相談してみてはいかがでしょうか。

感染症予防接種ナビでは、研究の一環として、「梅毒」に関する調査を行っており、経験談を募集しております。


取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
広島県感染症・疾病管理センター