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国立感染症研究所の2024年第14週(4/1-7)速報データによると、この週の「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の報告数は41人。今年に入っての累積は649人で、すべての都道府県で報告されています。
【2024年】4月に注意してほしい感染症!RSウイルス感染症徐々に増加 麻しん(はしか)流行に注意 医師「春休み明けもインフルエンザ下がり切らない懸念」
劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」は「人食いバクテリア」とも呼ばれる感染症で、主に溶連菌感染症と同じA群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病する例があります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。近年では妊産婦の症例も報告されています。感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「当院でも今年に入り80代の高齢の方や妊婦さんなど、3人の患者さんが劇症型溶血性レンサ球菌感染症で入院されています。この病気は急激に悪化し、命に関わることがあるので、流行について憂慮しています」と語っています。
去年は97例の死亡が報告されている
A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の症例では、去年340例の報告があり、そのうち届出時死亡例は97例でした。安井医師は、「A群溶血性レンサ球菌は、溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)の原因でもあります。溶連菌感染症は去年の秋ごろから高いレベルでの流行が続いています。溶連菌感染症の流行により、A群溶血性レンサ球菌に接する機会が増えていることが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加につながっていると考えられます」としています。
溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)は、春休みで減少
国立感染症研究所の2024年第14週(4/1-7)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の全国の定点当たり報告数は3.06。3週連続で減少していますが、この時期(第14週)としては、この2006年以降で最も高くなっています。都道府県別では山形7.25、北海道6.41、愛媛5.22、新潟5.20、宮崎4.92、富山4.50、佐賀4.48が高くなっています。安井医師は「第14週は4月の第1週のデータなので、溶連菌感染症が流行する幼稚園・保育園、学校の春休みの時期となり、報告数が減少する傾向があります。ですが、例年と比較すると患者数が高い状況が続いていますし、春休み明けにはまた患者数が増加していくと予測しています。溶連菌感染症は過去の例では患者数のピークは6月頃でしたので、これからも感染に気をつける必要があると思います」と語っています。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。溶連菌感染症の予防と治療
安井医師は「溶連菌感染症は、抗菌薬で治療が可能です。多くの場合は後遺症もなく治りますが、合併症を予防するために、症状が治まっても長い期間抗菌薬を飲み続ける必要があります。医師の指示に従って服用を続けることが重要です。そして、溶連菌感染症の症状が疑われるときは、早めに医療機関を受診してください」としています。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第14週(4/1-7)、A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について(2023年12月17日現在)
子ども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第14週(4/1-7)、A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について(2023年12月17日現在)
子ども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏