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国立感染症研究所の第42週(10/16-22)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は2.16。前週からは0.41ポイントの増加となりました。過去10年で最も高い流行水準を維持しています。地域別にみると、近畿地方や、九州地方で高い値となっています。特に、近畿地方では、大阪府(3.58)・京都府(3.18)・奈良県(5.47)と警報基準の3.0を超える患者報告数です。咽頭結膜熱に代表されるアデノウイルス感染症は、発熱・咽頭痛・結膜炎などの症状が現れます。今回、『感染症・予防接種ナビ』に寄せられたのは、大阪府の42歳の方からの経験談です。
【2023年】11月に注意してほしい感染症!専門医「インフルエンザ流行規模は予測不能 溶連菌感染症の動向気がかり 季節外れの流行のアデノウイルス感染症も…」 要注意は梅毒
咽頭結膜熱経験談 42歳 大阪府
10/19:起床時右目が腫れており目ヤニも発生。花粉症なので市販の目薬で対応10/20:前の週にこどもがアデノに感染したため自身への感染を疑う。仕事を中抜けし眼科受診→アデノ感染確定、帰宅後37.2℃
10/21:朝から熱が体調不良で解熱剤使用開始。最高38.4℃最低37.2℃。目の様子に変わり なし。目を拭いたティッシュの片付けと毎回の手洗いが面倒。
10/22:前日とほぼ同じ
10/23:熱に加えて頭痛も始まる。仕事できる状態ではないため有休取得。夜には咽頭痛と咳も出始める。寒い熱い寒い熱いをひたすら繰り返す。
10/24:前日同様良くなる見込みなし。夕方から早朝くらいまでは特にしんどい。
10/25:朝は、そこそこ快調であったが昼前くらいから悪寒発生。解熱剤を飲みなんとか昼食を食べる。まだ回復していません。アデノ以外に併発しているのか心配。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「咽頭結膜熱は、ここ数年、大きな流行がみられなかったため、これまで、アデノウイルスに感染していなかったお子さんが、多くいらっしゃると思います。アデノウイルスは感染力が強く、お子さんが発症し、保護者の方が看病していると感染する可能性が高いです。大人の場合は、これまでの免疫があるため、重い症状が出る場合は稀ですが、注意が必要です。今回のケースも、直接診断した訳では無いので、詳しくは分かりません。しかし、目の腫れの後に、咽頭痛が出た場合は、耳鼻科を受診してもいいでしょう。アデノウイルス感染症のほかに、違う感染症を併発しているのかとのご懸念があるとのことですが、他の細菌性感染症を併発しているケースも考えられます。これまでと違う症状を感じたら、辛くても、医療機関で、早めに診察を受けることを勧めます」としています。咽頭結膜熱とは?
咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39度の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。治療方法
特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。感染経路
咽頭結膜熱の感染経路は、主に接触感染です。また、飛沫感染もあります。原因ウイルスは、アデノウイルスで、感染力は強力です。直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接接触でも感染が広がります。
アデノウイルスは、環境中で数日間活性を保っているため、施設やご家庭などで患者が発生している場合は、皆がよく手を触れるものを中心に消毒を行うことも重要な感染対策となります。
感染対策
皆がよく手を触れるものを中心に消毒を行う場合、消毒薬としては次亜塩素酸ナトリウム(市販されているものではミルトンやピューラックス、家庭用漂白剤としてはハイターやブリーチ等)を 500~1000ppm 程度に薄めて使用することが推奨されます。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの消毒液は、人体に用いてはいけません。アルコールは、効果はあるのですが、効力を発揮するのに 10分以上の時間を要するため、使用しづらいという難点があります。接触感染対策として最も重要なことは手指衛生です。手指衛生は、流水・石鹸による手洗いが最も効果的です。咽頭結膜熱は症状消失後も約 1 か月間に渡って尿・便中にウイルスが排出されるといわれています。更に、感染しても症状のない無症候病原体保有者や、明確に主な3つの症状があらわれないことも少なからずあると考えられています。これらのことから、医療機関を受診して咽頭結膜熱と診断された者だけを隔離等の感染対策の対象としても、効果的な対策に繋がることは期待できません。これがこの感染症の感染対策を困難にしていると思われます。特に感染経験の乏しい小児の集団生活施設である保育園、幼稚園、小学校等では流行時期になると集団発生がみられることも珍しくはありません。
引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第42週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第42週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏