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赤ちゃんをまもるために 赤ちゃんをまもるために
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年37週(9/11〜17) 速報データによると、この1週間の梅毒の感染者報告数は全国で171人。今年の累積報告数は1万0657人となりました。去年のこの時期(2022年37週)の累積報告数と比較すると、約1.22倍に増加しており、流行の拡大傾向は続いています。都道府県別では、東京都2619人、大阪府1442人、福岡県633人、愛知県613人、北海道504人、神奈川県480人と大都市圏が多い一方、すべての都道府県で患者が発生しています。

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梅毒とはどのような感染症?

 梅毒とは、梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。また、一度治っても再び感染することがあります。

梅毒に感染すると?

 梅毒に感染すると、性器や口の中に小豆から指先くらいのしこりができたり、痛み、痒みのない発しんが手のひらや体中に広がることがあります。また、これらの症状が消えても感染力が残っており、人にうつす可能性があるほか、治療しないまま放置しておくと、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、時には死にいたることもあります。

感染症に詳しい医師は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「梅毒は2011年頃から増加傾向にあり、報告数はこの10年間で10倍以上に増えています。特に問題なのは、妊娠している女性の感染です。妊婦さんが梅毒に感染した場合、胎盤を介しておなかの赤ちゃんにも梅毒がうつります。感染した赤ちゃんは死産や早産になったり、生まれたとしても神経や骨に異常をきたすことがあります。これは先天梅毒と呼ばれているのですが、先天梅毒の赤ちゃんが増加していることが報告されています」としています。

先天梅毒が増えている

 国立感染症研究所が、2023年7月18日に発表した「日本の梅毒の症例の動向について」によると、先天梅毒の赤ちゃんは2022年は、20人が報告されています。そして2023年は半年(1〜26週)で既に20人が報告されています。女性の梅毒患者の届出数は、20〜24歳が一番多く、次いで25〜29歳、30〜34歳、15〜19歳の順で多くなっています。妊娠の可能性がある年代の女性に感染が広がっているのです。安井医師は、「妊娠をした女性は産婦人科を受診されると思いますが、妊婦健診では必ず梅毒血清検査が行われます。しかし、健診のたびに梅毒の検査が行われるわけではないので、妊娠初期に陰性でも、その後に感染する可能性もあります。おなかの中の赤ちゃんを守るためにも、妊娠しているお母さん、そしてパートナーの方も、梅毒に感染しないようしっかりと意識していただきたいと思います」と語っています。

梅毒が心配な方は、まず検査を

 検査・治療について男性は泌尿器科、女性は婦人科などで受けられます。また地域によっては保健所などで匿名・無料で検査できるところもあります。東京都では、来年の3月まで毎月1回「女性のためのHIV・梅毒同時即日検査」を実施しています(12月は除く/電話予約のみ受付)。

梅毒の治療法は?

 梅毒にはペニシリン系などの抗菌薬が有効で、飲み薬のほか、注射薬での治療も可能です。

 安井医師は、「感染者の数では男性が圧倒的に多くなっていますので、男性の方もきちんと検査・治療を行って、これ以上感染が広がらないようにすることが重要です。梅毒は症状が出ない時期が多いため、治療しなくても自然によくなったと勘違いしてしまうことがあります。心当たりがある方は、パートナーやおなかの赤ちゃんを守るためにも、まず検査を受けていただきたいと思います」としています。

引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年37週(9/11〜17)、日本の梅毒症例の動向について(2023年7月5日)、IDWR2022年第42号〈注意すべき感染症〉梅毒、妊娠梅毒の治療
厚生労働省HP:梅毒、梅毒に関するQ&A
東京都保健医療局:東京都性感染症ナビ「検査・相談」

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏