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赤ちゃんをまもるために 赤ちゃんをまもるために
 国立感染症研究所の第36週(9/4-9/10)の速報データによると、全国の梅毒の患者報告数は184人。2023年の累計は、10,396人となりました。2022年第36週の累積患者数は、8,456人でしたので、患者報告は、前年比で2000人近く増えており、今年は、1.5万人に迫る勢いとなっています。梅毒とは、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという細菌で、その病名は、症状の一つである赤い発しんがヤマモモ(楊梅)に似ていることに由来しています。検査で感染が判明した場合、治療に入ることになります。梅毒で、気がかりなのは、妊娠中に、妊婦が感染すると胎児が『先天梅毒』を発症する可能性があることです。

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先天梅毒とは?

 先天梅毒の場合、胎盤を介して母親から胎児に梅毒トレポネーマが感染します。出生児には無症状のことが多いのですが、早期先天梅毒では生後数か月以内に水泡性発しん、斑状発しんなどに加え、全身性リンパ節腫脹、肝脾腫、骨軟骨炎、鼻閉などを呈します。晩期先天梅毒では、生後約2年以降にハッチンソン3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯)などを呈します。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「梅毒の患者報告の勢いが止まらないことを憂慮しています。先日、産婦人科医の方のお話を伺いました。ある妊婦の方は、妊娠時の梅毒検査は陰性だったそうですが、赤ちゃんが早産で生まれ、呼吸状態も悪く、全身に発疹もあったため、検査したところ、梅毒への感染がわかったとのことです。事情を調べてみると、夫が妻の妊娠中に性風俗サービスを利用し、そこから感染していたことが分かりました。何の罪もない赤ちゃんが、苦しむこととなり、悲しい限りです。現在、先天梅毒についてのサーベイランスが無いため、詳しい数などは分かりませんが、これだけ患者数が増えれば、先天梅毒の赤ちゃんも、今後、増えていき、社会問題化することも考えられます。母体が梅毒に感染した状態であれば、死産・流産の危険性があるだけでなく、産まれてくる赤ちゃんに大きな後遺症を残す結果にもなりかねません。これから、妊娠・出産を考えている方には、特に知っておいて頂きたいです。梅毒は、皮膚科医さんが診察することが多いですが、産婦人科医さんにも、妊娠前の検査で陰性であっても、梅毒感染の可能性が無い訳ではないと知っておいていただければと思います」としています。

梅毒とは?

 梅毒とは、主に性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接すること)などによってうつる病気です。梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症で、梅毒の病変部位と直接接すること、具体的には、性器と性器、性器と肛門、性器と口の接触などでうつります。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。また、妊娠している人が梅毒にかかると、流産や死産となったり、赤ちゃんが梅毒にかかった状態で生まれる先天梅毒になることがあります。決して軽く考えてはいけない感染症です。

早期発見、早期治療。梅毒は治る感染症

 梅毒は適切な治療を受ければ治る感染症です。内服薬での治療が一般的ですが、注射薬での治療もあり、早期の場合は1回の注射で済みます。安井医師は、「梅毒は症状がない期間が長く、知らないうちに進行していきます。梅毒の症状が疑われた場合は、すぐに保健所などで検査をして治療をしてください。特に、これからお母さんになる10代・20代の方には、梅毒に関する知識を身につけて頂ければと思います。感染した部位に腫れがみられますが、その症状は、いったん消えます。しかし、そのまま体内に病原体は残っています。以前、梅毒の患者は、性産業従事者など、かなり限定的な方の間で確認されていましたが、患者数の増加に伴い、一般にも広がりをみせています。妊婦さんは健診の際に血液検査で梅毒について調べますので、必ず健診を受けていただければと思います」としています。


引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年第36週 、IDWR2022年第42号〈注意すべき感染症〉梅毒、妊娠梅毒の治療
厚生労働省HP:梅毒、梅毒に関するQ&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏