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国立感染症研究所の第31週(7/31-8/6)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は0.64。前週から約0.1ポイント増加しました。今年は23週(6/5-11)に0.69というピークがありましたが、再び同程度の流行が起こっています。RSウイルス感染症やヘルパンギーナなど多くの感染症が減少している今、注意が必要な感染症です。
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咽頭結膜熱とは?
咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。例年7〜8月に感染のピークがあり、子どもの感染者が多く、プールでの接触やタオルの共用などにより感染することがあるので、「プール熱」としても知られている感染症です。症状としては、38~39度の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。
感染症に詳しい医師は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「アデノウイルスには、51種類の血清型、および52型以降の遺伝型という多くの型があり、そのうちの主に3型が咽頭結膜熱の原因となります。多くの型が存在するため、一度感染しても、他の型に再び感染する可能性があります。他にも流行性角結膜炎など、様々な病気がアデノウイルスが原因で起こります。接触感染や飛沫感染するので、ご家庭や幼稚園・保育所などでは、手洗いや密な接触を避けるなど、予防に留意してください」と語っています。アデノウイルスが起こす感染症
咽頭結膜熱以外にも、アデノウイルスが原因の感染症は次のものがあります。・呼吸器感染症
主に3、7型によるもので、7型は重症の肺炎を引き起こすことがあります。乳幼児がかかることが多く、髄膜炎、脳炎、心筋炎などを併発することもあります。発熱や咳が長引き、呼吸障害など重症になることもあります。
・流行性角結膜炎
8、19、37型および53、54、56型などによるもので、目が充血し、目やにが出ます。結膜炎経過後に点状表層角膜炎を作ることが多く、幼小児では偽膜性結膜炎になることもあります。
・出血性膀胱炎
主に11型によるもので、排尿時痛があり、真っ赤な血尿が出ます。排尿時の痛みと肉眼的血尿が特徴で、これらの膀胱炎症状は2~3日で良くなります。
・胃腸炎
主に31、40、41型によるもので、乳幼児期に多く、腹痛、嘔吐、下痢などを伴います。
アデノウイルス感染症の治療・予防
咽頭結膜熱などアデノウイルスが原因の感染症を総称して「アデノウイルス感染症」と呼ぶこともあります。アデノウイルス感染症には抗ウイルス薬はありません。ほとんどは自然に治りますが、高熱が比較的長く(5日前後)続くことがあり、吐き気や頭痛が強い、咳が激しい時は早めに医療機関に相談してください。予防についてはワクチンはなく、接触感染・飛沫感染対策として流水や石けんによる手洗いなど手指衛生が重要です。夏場はプールなどで感染することも多く、プールから上がった時はシャワーを浴び、うがいをする。またタオルなどは共用せず、別々に使うことが感染防止につながります。
引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第31週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第31週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏