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国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年27週(7/3〜9)によると、ヘルパンギーナの定点あたりの報告数は7.32。これで9週連続の増加となりました。都道府県別では宮城が23.2、北海道、岩手、山形、群馬、新潟、三重、鹿児島で10を超えています。ヘルパンギーナは定点当たりの報告数が6を超えると警報レベルとなりますが、27週では27の都道府県で警報レベルとなっています。
感染症に詳しい医師は・・・
感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「ヘルパンギーナの流行は2005年に現在の集計方法になって以来、最も流行しています。多いのは東北や関東など、東日本が流行の中心になっています。例年7〜8月にピークがあり、流行はまだまだ続くと予測しています」と語っています。ヘルパンギーナとは?
ヘルパンギーナの由来はドイツ語で「水泡(ヘルペス)」と「喉の炎症(アンギーナ)」です。その名の通り、熱と口の中の粘膜にできる水泡性の発しんが特徴の、急性のウイルス性咽頭炎です。主にコクサッキーウイルスA群により咽頭の入り口部分に小さな水泡ができたり、熱が出るウイルス性の感染症です。潜伏期間は2〜4日。乳幼児に多く、突然38〜40℃の熱が出て1〜3日間続きます。全身倦怠感、食欲不振、咽頭痛、嘔吐、四肢痛などがある場合もあります。患者の年齢は5歳以下が全体の90%を占め、1歳代が最も多く、次いで2、3、4歳代の順で多いとされています。感染経路は?
感染経路は、接触感染を含む糞口感染と飛沫感染です。急性期に最もウイルスが排泄され、咳をした時の飛沫で感染が広がります。また、回復後にも2〜4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されることがあります。治療法、予防法は?
特別な治療法はなく、症状を和らげる対症療法になります。また予防については、ワクチンがなく、感染者との密接な接触を避ける、手指衛生を心がけることが重要です。水分補給、栄養補給に注意!
ヘルパンギーナはのどに強い痛みがあることがあるので、食べ物、飲み物がとりにくくなることがあります。夏場は脱水の可能性もあるので、水分補給は重要です。子どもが、のどが痛くて水分をとるのを嫌がる時は、麦茶や牛乳、冷たいスープなど刺激の少ない飲み物がおすすめです。また、イオン飲料や経口補水液などもいいです。コップで飲みにくい時は、ストローを使ったり、スプーンで少量ずつ飲ませるなど、水分補給を心がけてください。同様に、食べ物ものど越しの良いものがおすすめです。シャーベットやゼリー、リンゴのすりおろしなどは、水分補給にもなります。冷ましたおかゆ、うどん、グラタンなどのど越しの良く、刺激の少ないものがいいでしょう。症状が改善しても、手洗いなど衛生管理の徹底を
またヘルパンギーナは、症状が改善しても飛沫や鼻汁からは1〜2週間、便からは数週〜数か月にわたりウイルスが排出されます。保育所など子どもが集まる施設では、直った後も感染が広げないための衛生管理が重要です。おむつの処理をする時は、手袋をする。また、終わった後は手洗いを徹底することが重要です。いわゆる夏かぜの季節
ヘルパンギーナをはじめ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)などは、夏に流行する感染症です。いずれも感染力が強いので、特に子どもは感染に注意が必要です。子どもたちにとっては楽しみな夏休みが始まりますが、規則正しい生活、十分な栄養・水分の補給、手指衛生など清潔を心がけるなど、健康的な生活を送ることが予防につながります。
引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報速報データ2023年第27週(7/3~9)
厚生労働省:ヘルパンギーナ(感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について)、感染症エクスプレス@厚労省vol.303(2017年6月30日)、わかりやすい感染症Q&A 11「ヘルパンギーナ」
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報速報データ2023年第27週(7/3~9)
厚生労働省:ヘルパンギーナ(感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について)、感染症エクスプレス@厚労省vol.303(2017年6月30日)、わかりやすい感染症Q&A 11「ヘルパンギーナ」
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏