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水痘ワクチンの定期接種は1歳から 水痘ワクチンの定期接種は1歳から
 宮城県が7月6日に発表した令和5年第26週(6/26〜7/2)の「宮城県感染症発生動向調査情報」によると、宮城県の仙南保健所(柴田郡大河原町)管内で水痘(水ぼうそう)の患者が5人発生。定点当たりでは1.25となり、注意報レベルを超えました。

水痘(水ぼうそう)とは?

 水痘(水ぼうそう)とは、水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスによって引き起こされる感染症です。水分を含んだ発疹が特徴で、空気感染、飛沫感染、接触感染によって広がります。かつては年間に100万人程度が発症し、4000人程度が入院、20人程度が死亡するというという感染症でしたが、2014年から水痘ワクチンの定期接種が実施されるようになり、患者数は激減。定点当たり報告数で比較すると、実施前には年間で70〜80であったものが、実施後には約4分の1に減少しました。さらに新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年以降はさらに減少し、2022年はわずか3.98。一つの医療機関で1年間に発生した水痘の患者は平均約4人でした。

感染症に詳しい医師は・・・

 感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「2014年から水痘ワクチンの定期接種の実施、そして新型コロナウイルス感染症の流行があって、水痘の患者発生はかなり少なくなっています。現在、全国でヘルパンギーナが流行していますが、同じエンテロウイルスやコクサッキーウイルスが原因の手足口病も水ぼうそうと同じように水疱性の発疹が手や足に出ることがあるので、診断には注意が必要です。」と語っています。

ワクチンの接種率の低下が心配

 ただし、水痘の流行の可能性が全く無いわけではありません。その理由の一つが、定期接種の接種率の低下です。厚生省発表が発表した「麻しん風しん予防接種の実施状況」によると、令和3年度の第1期麻しん風しんワクチンの接種率は93.5%。6.5%の方が接種を受けていないことになります。

 このデータは麻しん風しんワクチンのデータですが、他の定期接種の接種率も同様に低下していることも考えられます。

 安井医師は、「私の勤務する病院でも定期接種を行っていますが、本来は標準的な接種期間が始まるとすぐに接種していただきたいのですが、かなり遅れていらっしゃる方もいます。あえて理由をお聞きするということはしていませんが、新型コロナへの感染が不安で、医療機関から足が遠のいたことが原因という方もいらっしゃるようです。水痘ワクチンの接種も忘れないでいただきたいです」と話しています。

水痘ワクチンの定期接種

 水痘ワクチンは1回の接種により重症の水痘をほぼ100%予防でき、2回の接種により軽症の水痘も含めてその発症を予防できると考えられています。

 定期接種は1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までの方を対象としています。2回の接種を行うことになっており、1回目の接種は標準的には生後12〜15か月の間に行います。2回目の接種は1回目の接種から3か月以上経過してから行いますが、標準的には1回目接種後6〜12か月経過した時期に行うことになっています。

 副反応については、注射した部位の腫れや発熱など、まれに報告される重い副反応としてはアナフィラキシー様症状などがあります。

定期接種のうち忘れはありませんか?

 水痘ワクチンを含め、予防接種法で定められた「定期接種」は多くの種類があります。早いものでは生後2か月から始まり、複数回うたなければならないものもあります。特に0歳1歳の乳幼児は種類も回数も多いので、かかりつけ医と接種スケジュールを相談し、うち忘れのないようにしましょう。

引用
宮城県:宮城県感染症発生動向調査情報 第26週(6/26~7/2)
国立感染症研究所:水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化〜感染症発生動向調査より・2021年第26週時点(2022年1月13日)
厚生労働省:麻しん風しん予防接種の実施状況(令和3年度)、水痘Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏