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 7月に注意してほしい感染症について、感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。

 流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【No.1】新型コロナウイルス感染症
 新型コロナウイルス感染症も患者報告数は、緩やかに増え続けています。

 2023年5月から、5類に移行しましたが、気がかりなのは、「XBB」系統への置き換わりが進んでいる事です。

 2023年6月16日に開かれた、厚生労働省の専門家会議に提出された資料によると、
「XBB.1.16」の民間検査機関での検出が、2023年第21週(5/22-5/28)時点で、25.13%にのぼっています。現時点で、「他のオミクロンの亜系統と比較し公衆衛生上のリスク増加につながる証拠はない」とされていますが、重症化するかどうかなどの臨床データはじゅうぶんではない状況です。

 7月は、過去の流行データからも、感染者数は大きく増加することが予測されます。

 今後、感染者数がどのように推移するか、引き続き、注意が必要といえるでしょう。

 現在、入院される方は少なくなったものの、症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。

 しかし、ワクチンを接種した後も、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。

【No.2】RSウイルス感染症
 西日本を中心に本格的な流行に入っています。気がかりなのは、関東・東海でも増加傾向にあり、流行が東日本にも広がりつつあり、全国的にも注意が必要です。今後の流行状況には注視してください。

 RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。

 RSウイルス感染症は乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。ワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。

【No.3】手足口病・ヘルパンギーナ
 手足口病は、エンテロウイルスなどを病原体とする感染症で、流行は夏に集中しています。3日から5日の潜伏期間の後に発症し、口の粘膜・手のひら・足の甲や裏などに、2~3ミリの水疱性の発疹が現れます。手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育園や幼稚園などの乳幼児施設における流行時の感染予防は、手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。同じウイルス属のヘルパンギーナも、例年、5月頃より増え始め、7月頃にピークを迎えます。

 九州の一部地域などでは、警報が発令されています。注意してください。

 喉からウイルスが排出されるため、咳をしたときのしぶきにより感染します。感染者との密接な接触を避けることや、流行時にうがいや流水石けんでの手指衛生を励行することが大切です。

【No.4】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。

【要注意】梅毒
 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。

 性別関係なく、患者報告数が増えています。特に女性では、梅毒に感染したと気づかないまま妊娠して、先天梅毒の赤ちゃんが生まれる可能性があるので注意が必要です。妊娠中でも治療は可能です。ほとんどの産婦人科では、妊婦健診の際に血液検査してもらえます。妊娠したら必ず梅毒の検査を受けましょう。

 早期の投薬治療などで完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また患者本人が完治しても、パートナーも治療を行うなど、適切な予防策を取らなければ、感染を繰り返すことがあるため、注意が必要です。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「新型コロナウイルス感染症の患者数は、梅雨明けの7月から8月に大きく増加すると予測しています。新型コロナで学級閉鎖・学校閉鎖が各地で起こっていることや入院患者数も増加傾向にあることから、子どもも大人も新型コロナへの警戒は引き続き行って頂きたいと考えています。また、RSウイルス感染症は流行が東日本にも広がりつつあります。今後、首都圏での流行があれば、全国的な流行となる可能性があります。感染力が強く、乳幼児は重症化のおそれもあるため、注意が必要です。幼稚園・保育園の先生は、園内の流行を確認したら、保護者の方たちへ適切な情報発信をお願いします」としています。

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏