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厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、2023年第24週(6月12〜18日)の全国の定点当たり報告数は5.65。前週の5.11からさらに増加しています。
流行株はオミクロンXBB.1.16に移行中
6月16日に開催された「第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」の資料によると、今年の第20週(5月15〜21日)の時点で流行している株は、オミクロン株のXBB.1系統(XBB.1.5、XBB.1.16、XBB.1.9、それ以外のXBB)がほとんどを占めており、第8波の流行の中心であったBA.5はほとんど検出されなくなりました。予測によると、第24週(6月12〜18日)ではXBB.1.16株が44%を占めるとされています。XBB.1系統は、免疫回避的
XBB.1系統の特徴として、免疫回避的ということがあります。免疫回避とは、免疫は本来ウイルスを的とみなし攻撃しますが、XBB.1系統は従来の免疫が効きにくく、感染しやすいのではないかと考えられています。現在ワクチン接種で使用されている新型コロナワクチンは、従来株(新型コロナウイルス感染症発生時の株、オリジナル株ともいう)と、オミクロン株(BA.4-5対応型)であり、XBB.1系統には対応していません。
感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「今回のワクチン分科会では、現在行われている『令和5年春開始接種』で実施している重症化リスクが高い方への接種は、重症化予防の観点から既存の2価ワクチンを引き続き用いるが、秋から予定されている『令和5年秋開始接種』では、XBB.1系統を含むワクチンを用いることが妥当と提言しています。しかし、秋にはオミクロンであってもXBB系統では無い新たな亜系統等が発生する可能性があることに留意とも記しています。これまで臨床医として多くの新型コロナウイルス感染症の患者を診察してきましたが、高齢者や基礎疾患がある方の症状は、ワクチンを接種している方より、未接種の方の方が重症化しやすいと感じています。現在の2価ワクチンについては、重症化予防の効果は引き続き有効とされていますので、重症化のおそれのある方は、ワクチン接種を検討されるといいと思います」と語っています。
すでに沖縄では感染者急増。梅雨明けに再び大きな流行が?
全国でじわじわと増え続ける新型コロナウイルス感染症。沖縄では定点当たりの報告数が28.74と突出して患者数が増えています。単純に比較はできませんが、インフルエンザの場合、定点当たりの報告数が10を超えると注意報、30を超えると警報レベルです。沖縄はすでに警報レベルの流行になっているのかもしれません。安井医師は、「現在は全国的に梅雨の時期で、湿気が多く、新型コロナの流行には適さない季節です。しかし梅雨が明けると、エアコンを使いがちで、湿度も下がりますし、換気をあまりしなくなるので、新型コロナウイルスが流行しやすい環境になります。現在も感染者数が増加しているということは、梅雨明けには大きな流行になるのではないかと予測しています」としています。
感染対策の基本は「換気」「手洗い」
新型コロナウイルス感染症は5類感染症になりましたが、感染対策の基本は変わりません。「換気」・・・家庭では、共用スペースや他の部屋も、窓を開けて頻繁に換気しましょう。24時間換気システムや換気扇も効果があります。
「手洗い」・・・こまめに手を洗いましょう。流水だけでもウイルス量をかなり減らすことができますし、石けんをつけるとなお効果的です。
「(重症化リスクの高い方への感染を防ぐために)マスクを着用」・・・受診時や、医療機関・高齢者施設などを訪問する時。通勤ラッシュ時など混雑した電車・バスに乗車する時には、マスクを着用しましょう。
新型コロナウイルスは後遺症の可能性もある、軽くみてはいけない感染症です。できる限りの感染対策を引き続きお願いします。
引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年6月23日)、第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料(2023年6月16日)、新型コロナQ&A 「オミクロン株対応2価ワクチンとは、どのようなワクチンですか。」、新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年6月23日)、第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料(2023年6月16日)、新型コロナQ&A 「オミクロン株対応2価ワクチンとは、どのようなワクチンですか。」、新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏