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2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症となりました。新規患者数の発生状況については全数ではなく、定点医療機関(全国約5000か所のインフルエンザ/COVID-19定点)からの報告が厚生労働省から週に1回公表されています。26日に発表された情報によると、2023年第20週(5月15〜21日)の全国の定点あたりの報告数は3.56。前週の2.63から約1ポイント増加しています。
先週に続き、増加傾向がみられます。引き続き注意が必要です。
報告数の多い都道府県は?
また都道府県別に見ると、沖縄が10.80と一番多く、次いで石川6.38、岩手6.32、新潟6.11、山梨5.68、北海道5.44となっています。また多くの都道府県で報告数は前週から増加しており、全国的に流行は拡大傾向にあります。感染症の専門医は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「当院でも新型コロナウイルスに感染した入院患者は増加傾向にあり、職員の感染もありました。5類感染症になって統計が変わりましたのでまだはっきりした傾向をつかむことはできませんが、定点あたりの報告数が5を超えると、流行の始まりになるのではないかとみています」と語っています。昨年は7月から急増
昨年のデータを見ると、夏には第7波があり、7月上旬から新規陽性者数は急増し、8月にピークを迎えました。一昨年も8月に流行の拡大があり、新型コロナは夏に流行する傾向があります。一方、6月は昨年、一昨年とも新規患者数があまり多くなっていません。これについて安井医師は、「これは一つの仮説ですが、新型コロナウイルスがエアロゾルで感染するということが関係しているのではないかと予測しています。エアロゾルは人の咳やくしゃみ、会話などの際に鼻や口からでる小さな飛沫ですが、新型コロナウイルスは感染者から出る飛沫とともに空気中を漂い、他の人に吸い込まれ感染が広がります。飛沫は冬場など乾燥している時期には空気中の水分が少ないので浮遊する時間や距離が長く、梅雨など湿度が高い時期には浮遊する時間や距離が短いと言われています。夏場はエアコンで除湿をし、室内の温度が上がるのを避けるために換気をあまりしないなど、新型コロナに感染しやすい環境になります。このような理由で、新型コロナの新規感染者が6月には少なく、7、8月には多くなったということが考えられますが、まだ2〜3年のデータですので、今年も同様になるのかというのは今のところわかりません。現に全国的に増加傾向を示すデータもありますし、引き続き感染対策はしていただいたほうがいいと思います」としています。
5類になっても、感染対策を!
新型コロナウイルス感染症が5類感染症となり、感染対策は個人・事業者の判断が基本となりました。しかし、流行期には以前と同様の感染対策が有効です。・換気
室内で多くの人がいる場合は、換気が重要です。窓を開けて自然換気をするほか、24時間換気システムや換気扇を有効利用しましょう。
・手洗い、手指消毒
ドアノブや電車のつり革など、様々なものを触れることにより手にウイルスが付着している可能性があります。食事の前後、外出先からの帰宅時などは、手洗いやアルコール消毒液での手指消毒が有効です。
・マスク着用
重症化リスクの高い方への感染を防ぐため、受診時や医療機関・高齢者施設などを訪問する時、通勤ラッシュなど混雑した電車・バスに乗車するときはマスクを着用しましょう。また、発熱や咳などの症状がある場合に外出をする際は、人混みを避け、マスクを着用しましょう。
引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年5月26日)、リーフレット「新型コロナウイルス感染症は5類感染症になりました(2023年度版)」
国立感染症研究所:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年5月26日)、リーフレット「新型コロナウイルス感染症は5類感染症になりました(2023年度版)」
国立感染症研究所:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏