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突然死につながる無呼吸発作を起こすことも! 突然死につながる無呼吸発作を起こすことも!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年16週(4/17〜23)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は1.12。この2週間で倍増しています。都道府県別では、鹿児島の4.00を筆頭に、北海道、富山、福井、大阪、奈良、和歌山、宮崎で2を超えています。

2年前の大流行と傾向が酷似?

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「RSウイルス感染症は2年前の2021年に大流行しました。その時は春先からゴールデンウィークにかけて患者数が増えていきましたが、今年の増加傾向もその時とよく似ています。その年は一旦ゴールデンウィークで報告数は減少しましたが、5月の後半からは再び増加に転じ、7月上旬がピークとなりました。現在は、近畿や九州などで増加していますが、今後東海や関東に広がっていき、2年前と同じような流行になるのではないかと危惧をしています」と語っています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症の原因となるRSウイルスは、日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発症を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされています。

 RSウイルス感染症は呼吸器の感染症で、症状としては、軽い風邪のような症状から、思い肺炎まで様々です。子どもがヒューヒュー、ゼイゼイと呼吸を苦しそうにしているときは、RSウイルス感染症かもしれません。

RSウイルス感染症はなぜ乳幼児にとって危険な感染症なのか

 RSウイルス感染症は、大人や、何度も感染したことがある子どもにとっては、風邪程度の症状で済むか、あるいは全く症状が出ない場合もあります。しかし、乳幼児、特に生後数週間から数か月の赤ちゃんがRSのウイルスに初めて感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状になることがあり、呼吸をすることが難しくなることもあります。突然死につながる無呼吸発作を起こすこともあります。

保護者やきょうだいからの感染に注意

 安井医師は、「RSウイルス感染症に特にインパクトが大きい乳幼児の行動範囲を考えると、主に家庭や保育施設で感染することが多いと思います。つまり両親やきょうだいなどご家族からの感染や、保育所などでの集団感染が多いと考えられます。RSウイルス感染症は飛沫感染や接触感染でうつりますので、風邪気味のまわりの方が乳幼児に近づかないようにすることも予防になります。特に流行地域では、赤ちゃんの世話をする方はRSウイルス感染症に感染しているかもしれないということを念頭に置いて、乳幼児に接するということが大事だと思います」としています。

急激な変化に注意!

 また、元気がない、ミルクの飲み方が少ないなど、赤ちゃんのちょっとした変化にも注意を払ってください。午前中は元気だったのに、夕方に急に症状が出るなど、比較的急激に悪化する場合もあります。少しでも気になるようであれば、かかりつけ医に診察してもらい、その指示に従ってください。

RSウイルス感染症の予防法は?

 RSウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染です。日常の手洗いなど、手指の衛生に気をつけ、大人でも子どもでも、少しでも咳などの呼吸器症状があればマスクを着用し、0歳児や1歳児との接触は避けるようにしましょう。また、おもちゃなど子どもたちが日常的に触れるおもちゃや手すりなどは、こまめにアルコールや塩素系の消毒剤などで消毒することが重要です。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年16週(4/17〜23)、RSウイルス感染症とは
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏