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大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則医師 大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則医師
 国立感染症研究所の第12週(3/20-3/26)速報データによると、国内のサル痘患者は19例が確認され、2023年に入り、累計で70例となっています。

 2022年第52週(12/26-1/1)までに確認された患者数は7例であったため、10倍のペースで感染者が増えていることになります。

 ※速報値ベースで比較

 また、厚生労働省が、2023年4月4日に発表した資料によると、3月19日から3月29日までに医療機関を受診した13人の感染が確認されています。

 今後も、患者数は更に増えていくと予測されています。

サル痘とは?

 サル痘は、「サル痘ウイルス」感染による急性発疹性疾患で、日本では感染症法により、4類感染症に位置付けられています。

 主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われていますが、現時点では不明であるとされています。

症状

・ウイルスに曝露後、通常6-13 日(最大5-21 日)の潜伏期間の後に発症。

・発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0-5日程度持続し、発熱1-3日後に発疹が出現。

・皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。

・欧州疾病予防・管理センター(ECDC)の報告では、現在欧州等で発生が見られるサル痘症例について、男性間で性交渉を行う者(MSM: Men who have Sex with Men)の間で報告されている症例では、外陰部に病変が集中していることを指摘している。

・多くの場合2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがある。

・皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。

・サル痘常在国における致命率は 1-11%程度とされている。

感染経路

・主にアフリカに生息するリスなどのげっ歯類をはじめ、サル、ウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。

・サル痘はヒトからヒトに感染することがあり、主に接触感染、飛沫感染をするとされています。また、理論的には空気感染も起こす可能性が指摘されていますが実際に空気感染を起こした事例は確認されていません。

・発症後からすべての皮疹が消失し新しい正常な皮膚に覆われるまで感染予防策をとることが推奨されています。

予防法

・天然痘ワクチンによって約 85%発症予防効果があるとされています。

・流行地では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが大切です。

感染症の専門医は…

 「サル痘に関しては、これからも増えていく事が予測されます。昨年と違い、2023年に入り、海外への渡航歴のない方の感染が目立っています。サル痘は、男性同性愛の方のコミュニティなどで感染するケースが多く見受けられ、その中で、感染が伝播しているものと推定されます。主な感染経路は、患者の体液・皮膚病変を介した濃厚接触と考えられていますが、国内に治療薬はなく、対症療法のみとなります。通常、生活している範囲では感染のリスクは少ないため、そんなに心配しなくてもいいでしょう。しかし、現在は、限定的なコミュニティの中で、ウイルスが循環していることが推測されますが、患者数が増えるとコミュニティの外にも増えていく可能性があります。今後、感染者数の動向に、注視する必要があるでしょう」としています。

まとめ

 サル痘は、通常生活においては、ヒトからヒトへの感染は稀です。

 しかし、海外では、リネン類を介しての医療従事者への感染報告もあります。

 厚生労働省は、「サル痘と疑われる発疹などの症状がある場合は、医療機関に相談」するよう呼び掛けています。

国立感染症研究所 サル痘とは

厚生労働省健康局結核感染症課 「サル痘に関する情報提供及び協力依頼について」

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏