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生後2か月になったら、ワクチン接種を! 生後2か月になったら、ワクチン接種を!
 4月1日から定期接種の標準的な接種期間が一部変更になりました。ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオの4種類の感染症を予防する「四種混合ワクチン」の接種開始年齢が、生後3か月から生後2か月になりました。これにより、標準的な接種年齢が生後2か月からとなる定期接種は、Hib(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス、四種混合の5種類になります。

四種混合ワクチンの新しい標準的な接種期間は?

 四種混合(DPT-IPV)ワクチンの新しい標準的な接種期間は次の通りです。

・初回接種(3回)生後2〜12か月の期間に、標準的には20〜56日までの間隔をおいて3回接種
・追加接種(1回)初回接種の3回目を終えてから6か月以上の間隔(標準的には12〜18か月後)に1回接種

 なお、ジフテリテと破傷風については、11〜12歳の期間にも二種混合(DT)ワクチンを1回接種します。

四種混合ワクチンが予防できる感染症

 四種混合ワクチンは、4種類の感染症を予防します。

・ジフテリア
 ジフテリアはジフテリア菌により発生する感染症です。かつては国内で年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた重要な病気です。主に気道の分泌物によってうつり、喉などに感染して毒素を放出します。この毒素が心臓の筋肉や神経に作用することで、眼球や横隔膜(呼吸に必要な筋肉)などの麻痺、心不全等を来たして、重篤になる場合や亡くなってしまう場合があります。

・百日せき
 百日せきは百日咳菌によって発生します。名前のとおり激しい咳をともなう病気で、一歳以下の乳児、とくに生後6ヵ月以下の子どもでは亡くなってしまうこともあります。主に気道の分泌物によってうつり、咳のために乳幼児では呼吸ができなくなるために全身が青紫色になってしまうこと(チアノーゼ)やけいれんを起こすことがあります。また、窒息や肺炎等の合併症が致命的となることがあります。

・破傷風
 破傷風は、破傷風菌により発生し、かかった場合に亡くなる割合が非常に高い病気です。以前は新生児の発生もみられましたが、近年は30歳以上の成人を中心に患者が発生しています。主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用します。口が開き難い、顎が疲れるといった症状に始まり、歩行や排尿・排便の 障害などを経て、最後には全身の筋肉が固くなって体を弓のように反り返らせたり、息ができなくなったりし、亡くなることもあります。

・ポリオ
 ポリオは、ポリオウイルスが人の口の中に入って、腸の中で増えることで感染します。増えたポリオウイルスは、再び便の中に排泄され、この便を介してさらに他の人に感染します。成人が感染することもありますが、乳幼児がかかることが多い病気です。ポリオウイルスに感染しても、多くの場合、病気としての明らかな症状はあらわれずに、知らない間に免疫ができます。しかし、腸管に入ったウイルスが脊髄の一部に入り込み、主に手や足に麻痺があらわれ、その麻痺が一生残ってしまうことがあります。

生後2か月になったら、5つの予防接種を

 今回の変更で、生後2か月になったら5つの予防接種を同時に受けることになります。感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「5つのものワクチンを1度に接種することで、心配になる保護者の方もいると思いますが、今までの研究で安全性は確認されていますし、副反応の可能性が増すということもありません。病院に行く回数も減らすことができるので、かかりつけの医師と相談の上、予防接種スケジュールを決めていただければと思います」と語っています。

五種混合ワクチンの製造販売が承認。接種の回数が減る可能性が!

 3月27日には、阪大微生物病研究会と田辺三菱製薬が「百日せき・ジフテリア・破傷風・ポリオ・Hib感染症」の5つの感染症を予防する「五種混合ワクチン」の製造販売承認を厚生労働省より取得したと発表しました。五種混合ワクチンは、四種混合ワクチンとHibワクチンが一緒になったもので、接種回数が減ることにより子どもや保護者の負担軽減につながると期待されています。現在厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において定期接種化に向けて議論が重ねられています。

引用
国立感染症研究所:定期/臨時予防接種スケジュール
厚生労働省:ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ
田辺三菱製薬:百日せき・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ・Hib混合ワクチン「コービック水性懸濁注シリンジ」製造販売承認取得のお知らせ(2023年3月27日)
第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 :「沈降精製百日せきジブテリア破傷風混合ワクチンを含む混合ワクチン等の摂取スケジュールの前倒しについて」(2022年10月4日)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏