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 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年9週(2/27〜3/5)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は0.34。前週よりも0.03ポイント増加しました。都道府県別では、北海道の1.73をはじめ、佐賀、新潟で1を超えています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染するとされています。

 通常は感染してから2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁などの症状が続きますが、大人や何度も感染している子どもでは、発症しても軽いかぜ程度か、あるいは無症状な場合もあります。

 しかし、初めて感染する乳幼児では、約7割は鼻汁など上気道炎症状のみで数日のうちに軽快するものの、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などの症状が現れます。特に乳児期早期(生後数週間〜数か月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「RSウイルス感染症は、2021年にも大きな流行がありましたが、今年もこのままいくと流行する可能性があるのではないかと注視しています。RSウイルス感染症は、0歳児や1歳児が発症すると、咳がひどくなり、呼吸困難になるなど、インパクトが大きい感染症です。また生後1か月未満の赤ちゃんが感染した場合は診断が困難な場合があり、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。データを見ると、北海道のほか、九州の各県でも流行が広がりつつあります。今後、全国的に広がっていくのかどうか、警戒する必要があります」としています。

RSウイルス感染症と診断されたら・・・

 安井医師は、RSウイルス感染症が流行している時期は、乳幼児のちょっとした変化でも注意が必要だとしています。

 「乳幼児のRSウイルス感染症は、症状があまり定まっていないため、発熱や鼻汁、咳などのほかにも、元気がないとか、ぐったりしているとか、ちょっとした変化でもかかりつけの小児科医にかかり相談された方がいいと思います。というのも、RSウイルス感染症は、急激に症状が悪化する場合があります。例えば午前中に軽いかぜ程度の症状だったお子さんが、夕方には呼吸困難で入院したというケースもあります。医師によっては、午前中に診察をして、また夕方に診察するなど、慎重に症状の経過を見守る先生もいます。乳幼児の場合は命に関わる病気ですので、乳幼児がRSウイルス感染症と診断されたら、その後の経過をしっかりと見ていく必要があります」

夜間に症状が悪化することも

 また乳幼児の場合、夜間に症状が急変することもあります。安井医師は、「かかりつけの小児科で受診できる時間帯ならばいいですが、それ以外に時間、特に夜間に急変するということも十分考えられます。呼吸困難になれば人工呼吸器の装着が必要となりますので、その場合は入院しなければなりませんが、小児救急ができる病院は限られています。そのような緊急の場合はどうすればいいのか、どこに連絡をすればいいかなど、最初に受診した時にかかりつけ医と十分に相談し、悪化した時を想定しておくことも重要です」

感染経路、予防方法、治療方法は?

 RSウイルス感染症は予防が難しい病気です。感染経路は飛沫感染と接触感染で、感染している人の咳やくしゃみ、会話している時の飛沫を浴びることで感染します。また、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり舐めたりすることで感染するので、保育所などで集団感染が起こることがあります。

 予防についてのワクチンは現在ありません。接触感染の予防としては、子どもたちが日常に触れる部分(おもちゃや手すり)などはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水・石鹸による手洗いかアルコール製剤による手指衛生が有効です。また特効薬はなく、治療は基本的には対症療法(症状を和らげる治療)になります。

引用
大阪府:感染症発生動向調査週報2023年9週(2/27〜3/5)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏