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 3月に注意してほしい感染症について、感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。

 流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【No.1】新型コロナウイルス感染症
 一時期の流行状況からは、落ち着きをみせているものの、未だ流行は続いています。

 集団生活の中で、子どもの間で感染が拡がっていくことが予測されます。また、学校での集団感染が発生し、子どもから家庭内にウイルスが持ち込まれるケースも増えると危惧しています。

 学校でできる感染対策として、マスク着用や手洗いの励行に加え、教室内ではこまめな換気を行ってください。何より重要なのが、多くの方がワクチンを接種することです。

 2022年9月から国内でも、オミクロン株対応ワクチンの接種が始まっています。

 しかし、ワクチンを接種していても、感染しないわけではなく、周囲にうつさないわけでもありません。ワクチンを接種した後も決して安心しないでください。

 ワクチン接種に加え、感染対策を徹底することで、ようやくウイルスに立ち向かえるのです。

【No.2】インフルエンザ
 インフルエンザは集団生活の場で広がる可能性があり、感染動向に注意が必要です。2月末時点で、ピークアウトの兆候が見え始めた感もありますが、手洗い・マスクの着用など基本的な感染対策はとるようにしてください。

 インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。3シーズンぶりの流行となりましたが、乳幼児が初めて感染すると重症化しやすいです。予防接種を受けることで発病率、重症化の低減につながると言われています。

 予防接種を受けてから、抗体ができるまで約2週間かかり、効果は約5か月間持続しますので、流行前に早めに接種することを、おすすめします。

【No.3】ヒトメタニューモウイルス感染症
 ヒトメタニューモウイルス感染症は、年代に関係なく感染します。2022年は夏に感染報告を多く耳にしましたが、例年はこの時期に流行します。

 症状は、咳・鼻水・上気道炎ですが、重症化すると気管支炎などの下気道炎や肺炎を引き起こします。

 また、発熱症状が、4-5日間続くこともあります。中でも注意が必要なのは、お子さんや高齢者です。ウイルスが発見されたのは、2001年と比較的最近で、国内の流行を示す全国的な統計データが無いのが現状です。

 子どもは、生後6ヶ月頃から感染が始まりますが、一度の感染ではじゅうぶんな免疫が獲得できず、大人になっても感染を繰り返します。一方、感染を繰り返すごとに症状は軽くなります。初感染の子どもや免疫が低下している高齢者は注意が必要です。飛沫・接触による感染により広がるとみられており、マスク着用・手指衛生、そして感染者とタオルの共用を避けることが大切です。

【No.4】感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症)
 感染性胃腸炎も注意してほしい感染症です。中でも、ノロウイルス感染症は、保育所や幼稚園・小学校などの集団生活でも多くみられる感染症です。

 ノロウイルスに感染すると、多い時には10回以上のおう吐や下痢の症状が続きます。そのおう吐物や下痢便には、ウイルスが大量に含まれ、わずかな量のウイルスが体の中に入っただけで、容易に感染します。ノロウイルス感染症は有効とされるワクチンや薬がまだ開発されていないため、対症療法を行います。下痢止めを飲むと、ウイルスが体内に残ってしまうため、飲まないようにしましょう。嘔吐や下痢が続いている時は、脱水症状に注意して下さい。水分を補給する際には、電解質輸液が効果的です。

 ウイルスが付着していると考えられる物品の消毒については、次亜塩素酸ナトリウム系(塩素系消毒剤)を用いて行いましょう。使用する濃度は500ppm以上が推奨されます。嘔吐や下痢などの症状が改善しても24時間は、自宅で様子をみるようにしましょう。症状がなくなったからといって、登園もしくは登校させると、集団感染につながるおそれがあります。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏