半年以上前に更新された記事です。
伝染性紅斑(りんご病)は、ヒトパルボウイルスB19による感染症です。
頬に出現するの紅斑が特徴で、4-5歳児を中心にしてみられる流行性発疹性疾患です。
「飛沫感染」と「接触感染」で広がり、患者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことや、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることで感染します。
幼児・学童が多くかかる感染症とされますが、成人も発症するケースがあります。
今回、「感染症・予防接種ナビ」に寄せられたのは、北海道の49歳の方の経験談です。
北海道・49歳・あゆゆさん
はじめは頭痛、倦怠感、寒気が現れ、38度以上の発熱。風邪かと思い近所の内科受診し、解熱剤等処方される。GW期間になり旅行に行くも体調は悪いままで夜間になると高熱、関節痛が酷くなる。足首がぱんぱんに浮腫み、立ち上がれない。ヨチヨチ歩きしか出来ない。食欲もなくほとんど寝て過ごす。
3日くらい経つと発熱、浮腫みは少しずつおさまってきたが、入浴後両脚にレース模様の発疹がでる。倦怠感や関節痛は相変わらず強く、生活に支障あり。
膠原病の症状に似ていたので不安になり、大学病院の総合診療科受診。
たくさんの問診から職場が中学校であり、第一に伝染性紅斑を疑われ、そのための様々な検査をしてもらい帰宅。
数日後、パルボB19ウイルスが多量に検出されて確定されました。
治療薬はなく対症療法のみ、半年くらいは症状は続くとのことでした。
この感染をきっかけに、関節痛や倦怠期が6年経った今も続いています。
寝起きはこわばりも強く、リウマチも疑い検査したが大丈夫でした。
いまだに後遺症が続いているのか、すっかり体質が変わってしまったようで、非常につらいです。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「今回、寄せられた経験談について、長引く症状との因果関係は不明です。しかし、伝染性紅斑に成人が感染した場合、立ち上がれないほどの痛みを感じ、動けなくなるケースもあり、特に女性が多いようです。また、感染を機に免疫異常が起こり、体調がなかなか回復しないケースや、赤血球が減少する例もあります。症状が長引くことは稀ですが、妊婦がさんが感染した場合、流産のリスクもあるので注意が必要です」としています。概要
4~5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。特徴的な症状
感染後10~20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。成人の場合
両頬の蝶形紅斑は少ないですが、合併症である関節痛・関節炎の頻度は、成人男性では約30%、成人女性では約60%と高率です。(小児では約10%以下)特に妊婦の場合
妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。感染経路
通常は飛沫感染もしくは接触感染ですが、まれにウイルス血症の時期に採取された血液製剤からの感染の報告があります。本症は紅斑出現の時期には殆ど感染力はありませんが、反対にウイルス排泄時期には特徴的な症状が現れないため診断に至らず、効果的な二次感染の予防策はありません。
引用 国立感染症研究所 伝染性紅斑とは
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏