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不衛生な状況にある生卵にも注意を! 不衛生な状況にある生卵にも注意を!
 感染性胃腸炎が、全国的に広がり、各地で本格的な流行をみせています。国立感染症研究所が発表した感染症発生動向調査週報2023年第4週(1/23-29)速報データによると、定点当たりの報告数は全国で7.38。富山、石川、山梨、長野、香川、大分、宮崎では10を超えています。冬場の感染性胃腸炎の原因はノロウイルスが多いとされていますが、感染性胃腸炎の原因となる病原微生物はそれだけではありません。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「新型コロナの流行もひと段落した今、外食をされる方も増えていると思いますが、それとともに病原微生物による感染性胃腸炎…いわゆる食中毒の機会も増えると思います。鶏肉などの中にいるカンピロバクター、手や指の傷から食品を汚染してしまう黄色ブドウ球菌。そして、海水に棲む魚介類に多い腸炎ビブリオなど、食中毒を起こす病原微生物にはさまざまな種類があります」と話します。

食中毒の原因は?

 厚生労働省が発表した2022年に起きた食中毒発生事例によると、病因物質として、主に次のようなものが挙げられています。

・ウイルス(ノロウイルス)
・細菌(カンピロバクター、ぶどう球菌、腸管出血性大腸菌、サルモネラ菌、ウエルシュ菌、セレウス菌など)
・寄生虫(アニサキス、クドア)
・自然毒(植物性、動物性)

適切な調理が食中毒を防ぐ

 安井医師は「感染性胃腸炎を起こすノロウイルスなどは、ヒトの腸管で増殖して、感染者から手指や食品などを介して感染が広がります。ですので、調理者が下痢や腹痛などで体調が悪い時は、飲食店でも家庭でも調理に関わらないということが感染を広げないためには重要です。一方、カンピロバクターやぶどう球菌など、細菌が原因の食中毒は、調理の仕方で防げる感染症です。それぞれの食品にあった、適切な調理をすることが重要です」としています。

ブドウ球菌食中毒

 ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌に汚染された食品を摂取することで起こります。黄色ブドウ球菌は人を取り巻く環境の中に広く分布していますが、化膿菌の一つとしても知られており、手指等の傷口から感染して、化膿巣を形成します。そこには黄色ブドウ球菌が多量に存在しているため、手に傷があるとそこから食品に菌がうつり、増殖して食中毒を起こします。症状としては、激しい吐き気、おう吐、腹痛、下痢などで、食べてから約3時間後と、比較的早く症状が現れます。

 例えば、傷がある手でおにぎりを作り、そのまま放置しておくと菌が増え、それを食べた人が食中毒になったという事例があります。また、弁当など調理してから時間が経った食品から食中毒が起こることもあります。

 黄色ブドウ球菌による食中毒を起こさないためには、調理加工での衛生的な食品の取り扱い、そしてすぐに食べない場合には適切な温度、時間で保存することが重要です。

サルモネラ感染症

 サルモネラ感染症は、サルモネラ属菌を原因とする食中毒です。サルモネラ属菌は自然界のあらゆるところに存在していますが、特に家畜(ブタ、ニワトリ、ウシ)の腸管内で、常在菌として存在しています。

 通常8~48時間の潜伏期を経て発症します。まず悪心およびおう吐で始まり、数時間後に腹痛および下痢を起こします。子どもや高齢者は重篤になることがあり、子どもでは意識障害、けいれん、菌血症など、高齢者では急性脱水症および菌血症を起こす場合があります。

 サルモネラは加熱不足の卵・肉・魚料理などが原因になりやすいとされています。サルモネラ属菌が死滅するためには、75℃で1分の加熱が必要とされています。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年第4週(1/23-29)速報データ、ブドウ球菌食中毒とは、サルモネラ感染症とは
厚生労働省:令和4年食中毒発生事例(速報)
食品安全委員会:ブドウ球菌食中毒ファクトシート、加熱調理と食中毒

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏