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ロタウイルスワクチンの定期接種は生後6週から ロタウイルスワクチンの定期接種は生後6週から
 2023年当初から、感染性胃腸炎の患者が急増しています。国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報第3週(1/16-22)速報データでは、定点当たりの報告数は7.71 。前週と比較すると1.33倍の増加、前々週と比較すると約2.2倍となっています。

 感染性胃腸炎の原因には、ウイルスや細菌など様々な病原体がありますが、冬はノロウイルスが原因である場合が多いとされています。ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口から感染し、ヒトの腸管で増殖。おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもや高齢者などでは重症化の可能性があり、吐物を誤って気道に詰まらせて、死に至ることもあります。

 一方、感染性胃腸炎は、ロタウイルスによって、引き起こされるものもあります。

栃木県では、ロタウイルスによる食中毒が発生

 一方、栃木県では1月に介護老人保健施設でロタウイルスによる感染性胃腸炎の集団感染が起こりました。提供された食事を食べた複数の入所者などが、下痢、おう吐、発熱などの食中毒症状を呈し、発症者と調理従事者の便からはロタウイルスが検出されています。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「ロタウイルスは何度も感染を繰り返すので、大人になると症状がほとんど出ないことが多いです。しかし、初めて感染する子どもは症状が激しく、重症化することもあるので注意が必要です。非常に感染力が強く、アルコールなどの消毒薬はあまり効き目がないので、予防をすることはかなり難しいです。しかし、ロタウイルスにはワクチンがありますので、新生児は定期接種を必ず受けてほしいと思います」と語っています。

ロタウイルス感染症とは?

 ロタウイルスは世界中に広く分布しているウイルスで、感染力が強く、衛生状態が良い国でもその予防は極めて難しいとされています。生後6か月から2歳をピークに、5歳までに世界中のほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するとされています。

 主な症状は水のような下痢、吐き気、おう吐、発熱、腹痛です。乳幼児など、初めて感染したときには特に激しい症状が起こることがあります。ロタウイルス感染症の流行時期は例年、3〜5月とされています。

ロタウイルスの定期接種

 ロタウイルスワクチンは定期接種となっており、原則無料で受けられます。ワクチンは生後6週から生後14週6日までに初回接種は受けることになっています。ワクチンは2種類あり、2回または3回接種となっていますが、効果に違いはないとされています。かかりつけの小児科医の指示に従って、接種を受けてください。

接種後は「腸重積(ちょうじゅうせき)症」に注意を!

 特に初回接種後1〜2週間くらいの間は、「腸重積症」にかかりやすくなると報告されています。腸重積症は腸の一部が隣接する腸管にはまり込む病気で、ワクチンの接種に関わらず3か月〜2歳くらいまでの子どもがかかりやすいとされています。

 速やかな治療が必要なため、ワクチン接種後「突然はげしく泣く」「おう吐を繰り返す」「便に血が混じる」「ぐったりして顔色が悪い」「機嫌が良かったり不機嫌になったりを繰り返す」などの様子が一つでも見られるときは、医療機関を受診しましょう。

ロタウイルスワクチンの接種は早めに

 月齢が進むと腸重積症にかかりやすくなるため、できるだけ起こりにくい早めの時期にロタウイルスワクチンの接種を始めましょう。厚生労働省では初回接種を生後15週以降に受けることは勧めないとしています。

 生後2か月から接種できるワクチンは、ロタウイルスの他にも、B型肝炎ワクチン、小児肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンがあります。同時接種が可能なので、かかりつけの小児科医と相談しながら、定期接種をすすめ、赤ちゃんの健康を守りましょう。

まとめ

 ロタウイルス感染症は、初めて感染する場合は、症状が重くなりがちです。

 また、アルコール消毒も、なかなか効かない、しぶといウイルスとのことです。

 安井医師は、「対策をとることが難しいため感染が広がりやすいです。過去には、お子さんが『お試し保育』に通ったときに、感染した事例もありました。当時、園内では流行しておらず、ウイルスが、しぶとく潜んでいた可能性もあります」とも話しています。

 おむつ処理後は、せっけんを使い、流水で手などを洗うようにしてください。


引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報の2023年第3週(1/17-23)速報データ
栃木県生活衛生課:食中毒の発生について(2023年1月25日)
厚生労働省:ロタウイルスに関するQ&A、重症胃腸炎の予防のためロタウイルスワクチンを接種しましょう!(リーフレット)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏