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大規模な食中毒の原因にも! 大規模な食中毒の原因にも!
 感染症胃腸炎の感染者が、全国的に増加傾向にあります。国立感染症研究所の第48週(11/28-12/4)速報データでは、感染性胃腸炎の定点あたりの報告数は3.81人。前週より約18%増加しました。福井県では前週の約2倍となる14.48人が報告されています。

冬の感染性胃腸炎の原因は、ノロウイルス?

 福井県健康福祉部保険予防課によると、「感染症胃腸炎の原因ですが、ウイルスの特定は行なっていないので確かなことは分かりませんが、季節柄ノロウイルスの感染が多いのではないかと推測しています。学校などでの集団感染という報告は受けておりませんが、第48週はある地域での報告数が多く、全体的にも数字は大きくなりました。しかし、第49週(12/5-11)はその地域での報告数が減少し、県全体の定点あたりの報告数は10.39 人となっており、流行のさらなる拡大という事態には至っていません。しかし、例年感染症胃腸炎の感染者が増える時期でもありますし、引き続き警戒を呼びかけているところです」とのことです。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、12月に注意してほしい感染症の第3位として、感染性胃腸炎をあげています。

 「ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、例年11月頃から翌年の2月頃の、冬の寒い時期に流行します。昨年は大きくはなかったものの、流行が発生しました。吐き気や嘔吐、下痢など辛い症状が出ますし、家庭内や学校・保育所など人と人の距離が近い場所で感染しやすいという特徴もあります。新型コロナやインフルエンザの流行に目が行きがちですが、感染症胃腸炎など他の感染症の予防にも気をつけていただきたいと思います」

ノロウイルスの症状は

 潜伏期間は24〜48時間で、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常これらの症状が1〜2日続きます。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。

ノロウイルス感染症の感染経路は

 ノロウイルスの感染経路は、ほとんどが口などからウイルスが入る経口感染で、次のようなケースがあります。

・感染者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐物から、人の手などを介して感染。
・家庭や学校・保育所、高齢者施設など共同生活施設など人同士の接触する機会が多い場所で、人から人へ飛沫などから直接感染。
・家庭や飲食店などで、調理する人が感染しており、その人を介して汚染した食品を食べて感染。
・汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べて感染。
・ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を、消毒不十分で摂取して感染。

「ノロウイルス食中毒」を防ぐために

 ノロウイルスに汚染された食品から感染する「ノロウイルス食中毒」は、食品から直接ウイルスを検出することは難しく、事例のうちの約7割は原因食品が特定できていません。食中毒を防ぐためには、食品取扱者や調理器具などからの二次汚染を防ぐことが重要です。

二枚貝などの食品は、十分に加熱を

 一般的にウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせる有効な手段です。ノロウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が85〜90℃で90秒以上の加熱が望まれます。

十分な手洗いを

 調理を行う前には、十分に手を洗いましょう。常に爪を短く切って、指輪等ははずし、石けんを十分に泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオルまたはペーパータオルでふきます。石けん自体にはノロウイルスの活性を直接失わせる効果はありませんが、手の脂肪などの汚れを落とすことにより、ウイルスを手指からはがれやすくする効果があります。

調理台や調理器具を殺菌

 調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)や亜塩素酸水(遊離塩素濃度25ppm)で浸すように拭くことでウイルスの活性を失わせることができます。

 また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は亜塩素酸水(遊離塩素濃度25ppm)に浸しておくか、85℃以上の熱湯で1分以上加熱することが有効です。

体調管理も重要。体調が悪い時には、無理をしない。

 食中毒を防ぐためにも、調理をする人は下痢やおう吐などの症状があるときは、食品を直接取り扱う作業はしないようにしましょう。また、症状がなくなっても、通常では1週間程度、長いときには1か月程度ウイルスの排泄が続くことがあります。症状が改善した後も、しばらくは調理などには関わらないようにするなど、注意が必要です。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2022年第48週(11/28-12/4)
福井県感染症情報:第48,49週
厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
福井県健康福祉部保健予防課