半年以上前に更新された記事です。

寒くても換気を! 寒くても換気を!
 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は、全国で増加傾向が続いています。都道府県別人口10万人あたりの感染発生数(11月29日)で見ると、上位には秋田、北海道、岩手、山形、福島など寒い地域が並んでいます。秋田と岩手では、新たに確認された1日の感染者数において、過去最多となりました。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、北海道や東北地方などで流行水準が高い現状ついて、「累積罹患率でみると、東北地方の各県は全国平均を下回っており、今まで新型コロナの流行がそれほどでもなかった地域で流行が進んでいる印象があります。それと同時に北海道・東北・北陸・山陰など、冬に向けた気温の低下が早い地域で患者数が増加しているのは、寒いために部屋の換気がおろそかになっていることも、原因の一つなのではないかと思います」と語っています。

新型コロナウイルス感染症は、どのように感染するのか

 新型コロナウイルスは、感染者の口や鼻から、咳・くしゃみ・会話の時に排出されるウイルスを含む飛沫、又はエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸い込むか、感染者の目・鼻・口に直接接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分、あるいは混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。

寒くなるこの時期だからこそ、部屋の換気を

 先日、『学校施設での感染対策』についての講演で、東北地方を訪れた安井医師は、換気の重要性について、力説したと言います。

 「寒くなると室内を暖房するため、どうしても窓を開けたくなくなるというのはよくわかります。しかし、換気の悪い密閉空間は3密の一つで、感染拡大のリスクが高くなります。人が集まる高齢者施設や学校・保育所などで、集団感染を起こさないためにも、換気を心がけていただきたいと思います」

冬場の換気のコツは?

・一般家庭では、建物に組み込まれている常時換気設備や、台所・洗面所の換気扇を使用することで、室温を大きく変動させることなく換気を行うことができます。これらの設備を常時運転することで、最小限の換気量は確保できます。

・暖房器具の近くの窓を開けると、入ってくる冷気が温められるので、室温の低下を防ぐことができます。窓を開ける時は、カーテンなどの燃えやすいものと暖房器具の距離をあけるなど、火災の予防に留意してください。

・短時間に窓を全開にするよりも、一方向の窓を少しだけ開けて常時換気を確保する方が、室温の変化を抑えられます。暖房によって室内・室外の温度差が維持できれば、十分な換気量が得られます。

・人がいない部屋の窓を開け、廊下を経由して少し暖まった状態の新鮮な空気を人のいる部屋に取り入れることも、室温を維持するために有効です。

改めて予防を

 行動制限が行われていない今、旅行や年末に向けて会食の機会が増えています。それとともに、新型コロナやインフルエンザの感染の可能性も高まってきます。飲酒を伴う懇親会、大人数や長時間に及ぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりが感染リスクの高まる「5つの場面」と言われ、注意が必要です。3密(密閉・密集・密接)や混雑、大声を出すような場面などの環境で感染リスクが高まります。

 安井医師は、「とにかく換気が重要です。寒くなると怠りがちですが、空気の入れ替えを今まで以上に意識していただければと思います。その他、手指衛生に関しては、アルコール消毒は、もちろんのこと、水と石けんで丁寧に手を洗うことでも、付着しているウイルスを大幅に減らすことができます。一人ひとりが今一度感染対策に向き合っていただければと思います」としています。

引用
厚生労働省:データからわかる新型コロナウイルス感染症情報(令和4年11月29日)、
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏