半年以上前に更新された記事です。
厚生労働省によると、日本における細菌性食中毒の中で近年、もっとも多く報告されているのが、カンピロバクターによる食中毒です。
カンピロバクター食中毒の主な原因と推定される食品、または感染源として、生の状態や加熱不足の鶏肉、調理中の取り扱い不備による二次汚染などがあげられています。
症状は、下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などで、多くの患者は1週間ほどで治癒します。
今回は、「感染症・予防接種ナビ」に寄せられた、経験談を紹介します。
茨城県・29歳
【金曜日】居酒屋で焼き鳥。ハツ、レバー、砂肝等を好んで食べる。
【土・日曜日】
特に異常なし。
【月曜日】
0時頃、悪寒を感じ布団を増やして寝る。
朝、首元に寒さを感じながらも平熱のため出勤。
通勤途中で体調不良で帰宅。37.3度。
内科を受診するもコロナの疑いで問診のみ。
自宅で抗原検査キットを試すが陰性。
昼過ぎから水のような下痢。夜発熱39度。
【火曜日】
朝から水のような下痢。
解熱剤を飲んだ後だけ体温が下がる。
薬が切れていると38.5~の発熱。
抗原検査キットを再度試すも陰性。
【水曜日】
水のような下痢。飲食後すぐに腹痛。
消化器内科のある病院を受診。
便の検査を依頼。整腸剤と下痢止め処方。
【木曜日】
水のような下痢。発熱はおさまる。
一口でも水を飲むとすぐに下す。
【金・土・日曜日】
少し下痢の頻度が下がる。
お腹を下してはいるが、体調は回復。
【月・火・水曜日】
薬の効果か軟便に変わる。
水曜日の朝、整腸剤が切れる。
【木曜日】
4時半頃、腹痛で起きる。水状の下痢。
薬が切れたせいか症状が戻る。
【金曜日】
再度病院を受診。先週の便検査でカンピロバクター検出されたと聞かされる。整腸剤を処方して貰う。
発熱していたせいもあり、病院側も警戒をしての診断だったため発覚が遅れました。
一軒目の病院でも焼鳥の話をしたのですが、もっと早く症状が出ると言われてしまいました。ネットなどを見て焼鳥かも?と思っていたため別病院を受診しました。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「カンピロバクター感染症による症状は、1週間程度で、おさまるとされていますが、症状の続く期間には、個人差があります。今回は、検査でカンピロバクターが検出されたとのことですが、焼き鳥がどの程度、火が通っていたかが、記載されていないため、原因となった食べ物については、何とも言えません。しかし、国の調査でも、市販の生の鶏肉のおよそ40%が、カンピロバクターに汚染されていたと言うデータもあります。生食は、絶対に避けてください。また、症状が回復した後、しばらくして『ギラン・バレー症候群』を発症することもあります。ギラン・バレー症候群にかかると、手足のしびれや麻痺が起こります。ある日、脚からしびれ、突然、立てなくなるケースが多いとされます。私は、絶対に食べません」としています。まとめ
新型コロナウイルス感染症の新規感染者の増加もあり、発熱があった場合の診察は、医療機関にとっても、負担が大きいと思われます。今回の経験談、感染経路は、定かではありません。
しかし、厚生労働省では、飲食店向けにリーフレットを作成し、鶏肉が「新鮮だから安全」ではないことを強調しています。生や半生、加熱不足の鶏肉料理がカンピロバクター食中毒を引き起こすおそれがあるとして、注意するよう呼びかけています。
家庭でも、鶏肉の生食は避け、調理の際は中心部までしっかり加熱するよう、気をつけましょう。
感染経路
食中毒集団発生で原因食品が判明した事例では、肉類が最も多く、大半は鶏肉およびその内臓肉です。一方、牛レバーの生食による例も見られます。しかし実際の食中毒事例では、少数菌でも感染が成立すること、潜伏期間が比較的長いこと、通常大気中では死滅しやすいことなどの理由から感染源の特定は極めて困難です。その他に、ペットからや、乳幼児収容施設での流行など、ヒト‐ヒト感染、井戸水、湧水および簡易水道水を感染源とした水系感染事例もあります。海外での旅行者下痢症の原因ともなります。
症状
主な症状は胃腸炎で、潜伏期間が2~5日間と他の胃腸炎よりやや長いことが特徴です。汚染食品中ではあまり菌が増殖せず、かつ少量の菌数でも発症するため、潜伏期間が長くなるのは摂取菌数の差によると考えられています。症状は下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などであり、他の感染型細菌性食中毒と酷似していますが、カンピロバクターは1日最高便回数が多く、血便を伴う比率も高いことが特徴です。発熱を伴うことが多く、改善病日でみるとカンピロバクターはサルモネラと比較して早く回復します。
胃腸炎の局所合併症として胆嚢炎、膵炎腹膜炎などがあります。まれですが腸管外感染として菌血症、髄膜炎などがあります。
予後
一般的な予後は、一部の免疫不全患者を除いて死亡例も無く、良好な経過をとります。しかし、近年感染後1~3週間(中位数:10日間)を経てギラン・バレー症候群(GBS)を発症する事例が知られてきました。GBSの罹患率は諸外国でのデータでは、人口10万人当たり1~2人とされています。日本での発生状況については報告システムがなく実数は不明ですが、年間2,000人前後の患者発生があるものと推定されています。カンピロバクター感染症に後発するGBSはこれまで散発例として確認されてきましたが、1999年12月東京都において、カンピロバクター集団食中毒患者19名中、1名のGBS患者の発生が確認されました。治療
一部の免疫不全者を除き予後は良好で、軽症例では抗菌薬治療なしでも自然に軽快することも多くあります。急性腹症、他の原因による急性胃腸炎、食中毒などと見分けながら食事療法、脱水の予防・治療などを行います。整腸剤は投与しますが、腸管蠕動(ぜんどう)を抑制するような薬剤は使用しないのが原則です。感染性は下痢急性期に高く、2~3週間排菌が持続しますが、有効な抗菌薬が投与されると排菌期間が短縮され、2~3日で感染性が失われます。
予防
カンピロバクターは、低温環境下で、より長時間生存できるため、冷蔵庫を過信してはいけません。加熱には弱いので、食品の正しい加熱調理に努めるとともに、調理などの過程で他の生鮮食品や調理器具の汚染に注意しましょう。鶏肉などを取り扱う場合は調理する人の手洗い、まな板などの調理器具を清潔に保ちましょう。特に乳幼児には鶏刺し、砂ずり刺し、牛レバー刺しなどの生食はさせないようにすることが重要です。食中毒が疑われる場合には、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ましょう。
引用:国立感染症研究所ホームページ「カンピロバクター感染症とは」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏