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レッドリボンはHIV/エイズに関する運動の世界的シンボル レッドリボンはHIV/エイズに関する運動の世界的シンボル
 12月1日は「世界エイズデー」。世界的レベルでのエイズまん延防止と、患者・感染者に対する差別・偏見の解消を図ることを目的として、1988年に世界保健機関(WHO)が提唱しました。日本でも毎年12月1日を中心に、エイズに関する正しい知識等についての啓発活動が行われ、全国各地で様々な「世界エイズデー」イベントが実施されます。

エイズとはどんな病気?

 エイズ(AIDS /後天性免疫不全症候群)とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することが原因の感染症です。主な感染経路は、性的接触、母子感染、輸血など血液によるものなどがあります。かつては重篤な全身性免疫不全により日和見感染症や悪性腫瘍を引き起こし、死に至る病気とおそれられていましたが、近年は治療薬の開発が進み、早期に治療を受ければ免疫力を落とすことなく、通常の生活を送ることも可能です。

日本の感染状況

 日本での2021年の新規報告数は、HIV感染者742(男性712、女性30)、AIDS患者315(男性300、女性15)。HIV感染者の中では、男性同性間性的接触(両性間性的接触を含む)による感染が全体の71.6%で、その大多数は20〜40代でした。また、日本国籍女性HIV感染者10のうち、異性間性的接触が7、その他不明が3。母子感染、静注薬物使用による感染もそれぞれ1件ずつ報告されています。

HIV感染からエイズ発症まで5〜10年かかる

 HIVに感染しても、すぐにエイズを発症するわけではありません。感染すると2〜3週間後にはウイルスが急激に増殖して、数日から10週間程度、発熱や咽頭痛、筋肉痛、皮疹、リンパ節腫脹、頭痛などのインフルエンザに似た症状があります。その後は無症状期といって数年から10年は症状がありませんが、その間もHIV感染症は進行しており、免疫の仕組みの中心である白血球の一種「ヘルパーTリンパ球(CD4陽性細胞)」を破壊し続けています。そして、ヘルパーTリンパ球が減り、免疫が正常に働かなくなると、カンジダ症やニューモシスチス肺炎などの日和見感染症や、悪性リンパ腫、カポジ肉腫などを発症します。これらの疾患を発症した時点で、エイズ発症と診断されます。

知らないうちに、大切な人にHIVをうつしてしまう可能性も

 日本国内のHIV感染で圧倒的に多いのは、性行為による感染です。数字の上では男性同性間の性的接触が多いのですが、男女間の性的接触でもどちらかが感染していれば、HIVはうつります。HIVは感染者の精液、膣分泌液、血液に多く含まれていますが、コンドームを正しく使用すれば、感染はほぼ100%防ぐことができます。そして大事なことは、自分がHIVに感染しているかどうかを知ることです。

HIVの検査はどこでできるの?

 HIVの検査は、保健所・病院・クリニックなどで実施しています。保健所や特設検査相談施設では、名前や住所を知らせずに無料で検査を受けることができます。検査は約5mlの血液をとり、通常検査の場合は検査結果が判明するまで1〜2週間かかります。HIVに感染しても、すぐには血液中にHIV抗体が検出されないので、正確な結果を得るためには、感染の可能性があった機会から3か月以上経ってから受検する必要があります。

世界エイズデーにあわせて、各地でイベントや臨時検査を実施

 12月1日の世界エイズデーにあわせ、エイズへの理解と支援のシンボルである「レッドリボン」にちなみ、各地でライトアップなどのイベントが行われます。またこの時期、検査を受けやすいように土日や平日夜間に無料・匿名でHIVの臨時検査を実施する自治体もあります。1時間程度で結果が判明する「即日検査」を行っている施設もあるので、予約の有無も含め、詳しくは検査を受ける地域の保健所に問い合わせてください。

 福岡県で世界エイズデーの取り組みをしているがん感染症疾病対策課によると、「新型コロナウイルス感染症への対応のため、一部の保健所で検査を休止しています。その影響もあり、統計上はHIV感染者・エイズ患者は減少傾向にありますが、実際にはコロナ以前と同程度の感染者が発生していると考えています。この世界エイズデーをきっかけに、感染が気になる方はぜひ検査を受けていただきたいと思います」と語っています。

感染を早く知り、治療を早期に始めれば、死の病ではない

 今のところ、HIVに感染した場合、体内から完全に取り除く治療法はありません。しかし、治療法は日々進歩しており、感染しても早期に治療を始め継続することにより、エイズの発症を防ぎ、感染していない人と同じぐらい長く、健康的な社会生活を送ることができるようになっています。エイズはもはや「死の病」ではありません。正しい情報を知り、対処することが重要です。

引用
国立感染症研究所:AIDS (後天性免疫不全症候群)とは、HIV/AIDS 2021年
(公財)エイズ予防財団:エイズ予防情報ネット
厚生労働省:世界エイズデーに向けた普及啓発イベントを実施します

取材 福岡県保健医療介護部がん感染症疾病対策課