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性感染症である梅毒の流行が、依然として拡大傾向にあります。国立感染症研究所が公開する感染症発生動向調査週報第42週(10月17〜23日・速報データ)によると、今年の梅毒の感染者の報告数は、1万141人。1999年に現在の統計方法になって以来、初めて年間1万人を超えました。感染者は東京2,880人、大阪1,366人など都市部が多いものの、全ての都道府県で報告されています。
梅毒はどのような感染症?
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という病原菌が原因の感染症です。主に性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつりますが、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染することもあります。感染すると、経過した期間によって、さまざまな症状が現れます。第1期・・・感染後約3週間
まず、第1期・・・感染後約3週間後には、感染おもに部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりができることがあります。また、股の付け根部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。痛みがないことも多く、治療をしなくても症状は自然に警戒します。しかし、体内から病原体がいなくなったわけではありません。第2期・・・感染後数か月
治療をしないで3か月以上を経過すると、病原菌が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発しんが出ることがあります。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」と呼ばれています。この症状も治療しなくても数週間以内に消える場合があり、また再発を繰り返すこともあります。しかし治療をしないと、病原菌である梅毒トレポネーマは体内に残り続けます。晩期顕性梅毒・・・感染後数年
感染後数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることもあります。先天梅毒
また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通じて胎児が感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形などがおこることがあります。梅毒は時に無症状になりながら進行するため、症状に気づいた時にはすぐに医療機関を受診して、治療を行うことが重要です。梅毒は早期の薬物治療で完治が可能
梅毒の治療は、一般的には抗菌薬を内服することで治療をします。病変の部位によっては、入院の上、点滴で抗菌薬の治療を行うこともあります。感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「梅毒は抗菌薬を内服することで治療できますが、場合によっては1か月以上も飲み続ける必要があります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で服用をやめてしまうと、完治しません。処方された薬は確実に飲み、きちんと医師の指示に従い、辛抱強く治療を進めることが重要です」と語っています。
大事な人にうつさないために、一緒に検査・治療も
梅毒は性交渉などで、感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することでうつります。予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防ができるわけではありません。相手にうつしてしまう場合もあるので、皮膚や粘膜に異常があった場合は性的な接触を控え、早めに医療機関を受診しましょう。地域によっては保健所で匿名/無料で検査できるところもありますので、少しでも気になる方は、ぜひ検査を受けてください。周囲で感染の可能性がある方(パートナー等)がいる場合は、一緒に検査を行い、必要に応じて一緒に治療を行うことも重要です。
引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 第42週(10月17〜23日)速報データ
厚生労働省HP 梅毒に関するQ&A
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 第42週(10月17〜23日)速報データ
厚生労働省HP 梅毒に関するQ&A
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏