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お盆休みの医療機関も! お盆休みの医療機関も!
 新型コロナウイルス感染症の第7波の流行が依然として続いています。8月9日に新たに確認された感染者数は、全国で約21万人。東京、大阪では1日で2万人以上の新規感染者が確認されました。行動制限のない今年の夏は、お盆休みで帰省する方も多く、人の移動がさらなる流行の拡大を招く可能性があります。

今、病院では・・・

 新たな感染者がこれだけ多く発生している今、医療機関はいまだかつてない危機に瀕しています。感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、現在の状況をこう語っています。

 「もちろん感染対策は万全にやっているのですが、別の病気で入院される方が入院時のPCR検査で陰性でも、実は感染していたというケースがあり、そこから院内感染が広がるというケースが多発しています。職員の感染も相次ぎ、医療スタッフが手薄なところに、新規の感染者が山のように押し寄せてきています。もうパンク寸前で、これはうちの病院だけではなく、全国の多くの病院で起こっている事態です」

 安井医師の勤務する病院では新型コロナの感染者の受け入れを行っていますが、それ以外の疾患の患者を受け入れるのが難しい状況になっています。このまま行けば、コロナ病棟が満杯になり、全ての新たな患者を受け入れられなくなる可能性もあるということです。

第7波の特徴

 安井医師によると「第7波の症状の特徴としては、第6波と同様に発熱や喉の痛みが見られます。感染力が強くなっているのか、あるいは最後にワクチンを接種してから時間が経っているので、ワクチンの効果が薄れてきているのかはわかりませんが、感染者と短時間接触するだけでも感染している印象があり、感染の予防はかなり難しいのではないかと思っています。ワクチンを接種していても発症する人はいますが、接種している方は症状が重くならないケースが多いという印象があります」

 感染する場所としては、若い人は会食、家庭内では子どもがまず感染し、家族みんなにうつすというケースが多く見られる。また、職場内でもクラスターも発生しているということです。

お盆休みで、診察してもらえないことも

 お盆休みに入るこの時期、感染防止は引き続き行ってほしいと、安井医師は言います。

 「まず、帰省等で人の移動が増えるので、感染の機会が増えると思います。さらに、会食の機会も増えるので、そういった場所は感染の可能性が高まります」

 現在流行しているオミクロン株は潜伏期間が2〜3日、曝露から7日以内で発症するケースがほとんどとされています。お盆休みの初めに感染したとすると、発症するのはまだお盆休みの最中で、多くの病院が休診の可能性があります。発熱や喉の痛みがあっても、診察してもらえないケースがあるかもしれません。旅行先で症状が出ることもあるので、診察してもらえる医療機関を予め探しておくことも重要です。

 「医療は早期診断、早期治療が重要です。早期に適切な診断を受け治療を受けられれば、その後の症状は大きく変わります。新型コロナウイルス感染症も同様で、早く治療が受けられれば、それだけ重症化は防げます。お盆休みと医療機関のひっ迫で、受けるべき医療が受けられないという事態がとても心配です」

重症化しやすい人がいることも忘れないで、しっかりと予防を

 オミクロン株が流行の主体となって、重症化や死亡する割合は下がりました。しかし、高齢者や基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満、喫煙など)がある方、一部の妊娠後期の方は重症化のリスクが高いとされています。30歳代と比較した場合、70歳代の重症化率は47倍、80歳代の重症化率は71倍、そして90歳以上は78倍となります。帰省で高齢の家族と会うということは、それだけのリスクがあるということを考慮しなければなりません。

 新型コロナウイルス感染症は、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染リスクが高まります。飲酒を伴う懇親会、大人数や長時間に及ぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わり(休憩室、喫煙所、更衣室など)といった場面では、感染が起きやすく注意が必要です。そして、マスクの適切な着用、こまめな換気、手洗いなどを行い、これまで以上に感染予防の対策を心がけましょう。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2022年第29週
厚生労働省 (2022年8月版 新型コロナウイルス感染症の“いま"に関する11の知識

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏