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家庭内感染にも注意! 家庭内感染にも注意!
 乳幼児の感染が気がかりなRSウイルス感染症。

 今年の5月頃から東海地方を中心に流行が始まり、定点当たりの報告数が全国ではついに10週連続の増加となりました。

 テレビのニュースで取り上げられるなど、社会の関心も高く、感染拡大の傾向はまだまだ続くと見られています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「現在流行している東海地方や近畿地方ですが、これからは関東地方や中国・四国・九州地方に感染が広がっていくと予測しています。夏休みで帰省される方も多いと思いますが、人の移動とともに、感染が広がっていく傾向にあります。学校や幼稚園・保育所が夏休みとなっても、流行はまだまだ続くと思います」と話しています。

大分県感染症対策課によると

 九州地方では、定点あたりの報告数が多いのが大分県です。

 県内の感染者数などのデータを取りまとめている福祉保健部感染症対策課では、
第29週(7/18〜24)のデータを受けて、マスコミに向けてプレスリリースを出し、注意喚起を行っています。

 担当者は、「全国の傾向とそれほど大きな差はないと思いますが、大分県でもこの1か月で感染者が急増しています。地域でいうと、人口の集中している大分市で感染者が多く出ています。年齢別では、1歳が一番多く、次いで0歳、2歳の報告が多くなっています。子どもから子どもへの感染が多い感染症ですが、学校や幼稚園が夏休みになっても、保育所や児童クラブなどで会う機会があり、流行はまだまだ続くと思います。感染防止については、手洗いやマスク、また家庭内感染について注意喚起を行っています」と話しています。

新型コロナウイルスとの同時感染もが気がかり

 安井医師は、新型コロナウイルスとの同時感染も心配しています。

 「小児科の先生は新型コロナウイルス感染症を診察する機会が少なく、RSウイルスが疑われたとしても、新型コロナの陽性反応が出た場合、治療できないケースも出てきています。特に乳幼児で呼吸困難場合は、すぐに入院をして呼吸の管理をする必要があるのですが、その判断が遅れて、症状が重くなる場合があるかもしれません。現在、新型コロナウイルス感染症が再び大流行となっていますが、RSウイルス感染症の流行と重なったことは、特に小さいお子さんにとって良くない状況であると言わざるを得ません。命を守るという観点において、乳幼児は新型コロナよりも、RSウイルスの感染に注意が必要です」


RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症とは、呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発症を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされています。症状としては軽い風邪のような症状から、重い肺炎まで様々です。しかし、初めて感染発症した場合は重くなりやすいといわれており、生後数週間から数か月の乳児がRSウイルスに初めて感染した場合は、細気管支炎や肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあり、小さい子どもほど注意が必要な感染症です。

RSウイルス感染症に感染すると、どうなるの?

 通常RSウイルスに感染してから2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁などの症状が数日続きます。多くは軽症で済みますが、重くなる場合には、その後咳がひどくなる、喘鳴(ぜんめい=呼吸の際にヒューヒュー・ゼイゼイという音がする)が出る、呼吸困難になるなどの症状が出て、場合によっては細気管支炎、肺炎に発展していきます。低体重児や、心臓や肺に基礎疾患がある、神経や筋肉の疾患がある、免疫不全が存在する子ども、生後3か月以内の乳児への感染は特に注意が必要です。

どうすれば予防できるの?

 RSウイルス感染症は予防の難しい感染症ですが、飛沫感染と接触感染でうつるので、新型コロナウイルス感染症と同様の予防方法が有効です。日常の手洗いやマスク、そして子どもが触るおもちゃや手すりなどの消毒。そして、咳などの呼吸器症状がある場合は、人に会わないようにしましょう。特に0歳児や1歳児など、症状が重くなりやすい子どもには、なるべく接触しないようにすることが重要です。年長の子どもが外出先で感染し、乳幼児にうつすということもよくあるので、家庭内での感染対策を今一度確認しましょう。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2022年第29週
厚生労働省 RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
大分県福祉保健部感染症対策課