半年以上前に更新された記事です。
RSウイルス感染症の患者報告数が増え続けています。
国立感染症研究所の第26週(6/27-7/3)速報データによると、RSウイルス感染症の定点当たりの報告数が、前週と比べて全国で約1.6倍と、急激な伸びをみせています。
RSウイルス感染症で気がかりなのは、乳期、特に乳児期早期(生後数週間~数カ月間)に初感染した場合、細気管支炎・肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあることです。
また、突然死に繋がる無呼吸発作を起こすこともあります。
今回は、2021年の流行時にRSウイルス感染症を発症した1歳児(当時)のお母さんに取材した内容を再掲載します。
※2021年7月27日掲載
1歳児が発症
1歳になる子どもは、近くの保育園に通っています。普段は、元気に遊びまわっていますが、気管支が弱く、風邪をひくと咳が悪化しやすいのは前から気がかりでした。発症当日の朝は37度後半の発熱と咳。元気ではあるものの、念のためかかりつけ医を受診しました。お医者さんからは「喉が赤いので風邪だろう」との診断でした。その日は、念のため薬を吸入した上で、気管支を広げる薬やぜんそく症状を抑える薬が処方されました。
更に、2日目から食欲がなくなり熱も38℃まで上がりました。3日目には、鼻水・咳がひどくなり、せき込んで嘔吐することもありました。
長引く症状
4日目に病児保育を申請するため、かかりつけ医とは別の指定病院を受診しました。結果は、上気道炎との診断でした。その後も症状はおさまらず、数分ほど咳が止まらなくなったり、ぐったりした様子になり急に寝入ってしまうなど、今までに見たことがないほどの辛そうな様子で、「ただの風邪ではない」と感じました。夜中も何度も咳で目が覚め、親として心配でした。
5日目には、かかりつけ医を再度受診。お医者さんの判断で、RSウイルス感染症の検査を実施し、陽性の判定が出ました。症状は、少し治まりましたが、それでも37℃後半の発熱、咳、鼻水が続いた状態が6日目まで続きました。7日目に、ようやく熱が下がり、親子ともども、ほっとした事を覚えています。
保育園への要望
発症9日目に、ようやく全ての症状が治まりました。かかりつけ医にも、もう保育園に行ってもよいと診断され、翌日から元気に登園しました。発症5日目にこちらから保育園に問い合わせると、同じクラス(20人程度)に2名ほどがRSウイルス感染症と診断を受けたお子さんがいたことを知らされました。
その他多くのお子さんが発熱で休んでいたそうで、検査を受けていないだけで、その子たちもRSウイルス感染症だったのかもしれません…。
保育園や幼稚園からも、「園内での感染情報の共有」などを行い、保護者とのコミュニケーションを取って頂ければと感じました。
情報も感染予防に必要なのかもしれません。
不安な1週間
これまでも何度も風邪をひいていますが、その中でも比較的長い期間熱が続き、咳もひどいなど、とても辛そうに見えました。咳が数分止まらず、パニック状態で泣き叫んでいる姿を見たときには「このまま息が止まってしまうのではないか」と親の私自身もパニックになりました。1週間近くご飯をあまり食べなかったので栄養状態も気になりました…。入院するほどの重症ではなかったとはいえ、とても不安な1週間でした。保育園、病児保育の保育園、SNSでつながっている全国のママ友などのお話を聞いていても、本当にたくさんのお子さんがRSウイルス感染症にかかっていて驚きました。お医者さんからも、「特別な薬もないし、経過を見守るしかない」と言われましたが、子どもの体調の変化に早めに気づき、気管支の薬などを処方してもらえて、よかったと思っています。一方で、0-1歳はマスクやうがいといった基本的な感染予防も難しいので、どうやって子どもを守ってあげたらいいのか悩ましいなという思いです。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「RSウイルス感染症は、小さなお子さんにとっては、新型コロナウイルス感染症の以上にインパクトがあります。重症化すると、呼吸困難になることもあり、気管挿管や人工呼吸器が必要なケースもあります。感染を機にぜんそくを引き起こすお子さんも珍しくありません。また、感染してから悪化するまでが早く、朝、咳をしていたと思ったら夕方になると、ゼイゼイと呼吸状態が悪化することもあります。感染力も強いので、遊んでいるお子さん同士で、うつし合ってしまうこともあるので、注意してください」としています。取材から1年後
取材したお母さんによると、2歳になったお子さんは、当時、気管支が弱かったものの、幸い、ぜん息になることもなく、毎日、元気に遊びまわっているとのことです。また、お子さんの通う保育園で、現在、RSウイルス感染症が流行しているとのことですが、保育園から「感染症に関するお知らせ」が出されるようになったとのことです。
流行地域とその周辺の方は、感染症の流行に注意しながら、お子さんに咳などの症状があれば、早めにかかりつけ医を受診するようにしてください。
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏