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梅毒が今年に入り、昨年同時期を上回る患者報告数となっており、21世紀に入ってから最多となる可能性があります。
昨年同時期の累積患者報告数は1,956人でしたが、2022年第17週(4/25~5/1)時点では3,213人です。比較すると約1.6倍となり、年間の患者報告数が過去最多となった昨年を大きく上回っています。今後の発生動向に注意が必要です。
梅毒とは
梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。
感染症の専門医は
(安井医師)梅毒の患者報告数は、このまま増加傾向が続くと、年末には1万人をこえるのではと予想されます。昨年は新型コロナの影響で外出の機会も少なく、観光客も少なかった事から、ここまで梅毒の患者報告数が増えるとは思いませんでした。今後は新型コロナの影響が少なくなってきたら、人の流れが緩和され、6月からは海外からの観光客も入ってくるとされています。患者報告数が爆発的に増える可能性も考えられます。特に、夏場は開放的な気持ちになる季節でもあり、注意が必要です。
地域別 累積患者報告数が多い順(2022年第17週時点)
・東京都(993人)・大阪府(347人)
・愛知県(200人)
・埼玉県(138人)
・神奈川県(132人)
性風俗産業の従事歴・利用歴がなくても、感染が広がっている
2018年より梅毒患者報告数が増え始めたことから、2019年1月1日より梅毒の届出基準の改正が施行されました。新たに追加されたのは、性風俗産業の従事歴・利用歴の有無、口腔咽頭病変の有無、妊娠の有無、過去の感染歴(治療歴)、HIV感染症の合併の有無等の項目です。特に性風俗産業の従事歴・利用歴と、口腔咽頭病変については、以前より備考欄への記載が多くあったため追加となりました。
2022年第1四半期(第1週~13週)の性風俗産業の従事歴・利用歴は、男性で「従事歴あり」と答えた人の割合は3%、「利用歴あり」が36%でした。女性は性風俗産業の「従事歴あり」と答えた人の割合が39%で、「利用歴あり」が2%と報告されています。
一方で、男女ともに性風俗産業の従事歴や利用歴がなくても梅毒に感染しています。自分だけではなく、パートナーを含め、梅毒に関しての正しい知識をもつことが大切です。
引用:国立感染症研究所「日本の梅毒症例の動向について」 (2022年4月6日現在)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏