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5月に注意してほしい感染症ランキング1位から順に、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【No.1】新型コロナウイルス感染症
新型コロナはBA.2(オミクロン株の別系統)に置き換わりが進んでおり、感染力が強いということから、今一度、感染対策をしっかりすることが大切です。人と会話するときはマスクの着用、屋内では部屋の換気をこまめにしましょう。感染を予防するために、この二つは徹底してください。高齢者は特にワクチン接種で重症化を防げるので、まだ接種していない人を含め、接種してほしいです。若い人でも、高齢者に接する機会がある人はワクチン接種をおすすめします。今後、ゴールデンウィークで帰省や旅行といった、人の移動が増えることが予想されます。軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をしましょう。オミクロン株の感染力は強く、年齢に関係なく全ての年代で感染がみられています。ワクチン接種をした上で、マスク着用や部屋のこまめな換気といった基本的な感染対策を続けていきましょう。
【No.2】咽頭結膜熱
咽頭結膜熱は、例年5月から患者報告数が増え始める感染症です。典型的な症状は発熱、咽頭痛、結膜炎です。発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。
予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。
【No.3】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、例年春に患者報告数が増え始めます。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がります。学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。
感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。
【No.4】手足口病
例年、手足口病の流行は7月下旬にピークを迎えます。しかし昨年は、国立感染症研究所のIDWR週報データによると、第33週(8/16~22)から報告数が増え始め、九州地方を中心として患者報告数が多くみられました。年齢別では、2021年の第1週(1/4~10)から第43週(10/25~31)までの累積患者報告数をみると、1歳が44.7%、2歳が25.2%であり、例年と同様に1歳と2歳が大半を占めています。
手足口病はエンテロウイルスなどを病原体とする感染症で、流行は夏季に集中しています。3日~5日の潜伏期間の後に発症し、口の粘膜・手のひら・足の甲や裏などに、2~3ミリの水疱性の発疹が現れます。手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育所や幼稚園などの集団生活では、感染予防として流水・石けんを用いた手洗いの励行と、排泄物は適切に処理をしましょう。
一方で、子どもがウイルス感染し、その後に看病にあたった大人が手足口病に感染し発症する例もみられます。職場では感染対策としてマスクを着用し、こまめに石けんを用いて手洗いを行うようにしてください。
【要注意】梅毒
梅毒の患者報告数は、昨年は過去10年で最多の患者報告数でした。今年に入り、昨年同時期を上回る患者報告数となっており、21世紀に入ってから最多となる可能性があります。今後の発生動向に注意が必要です。特に、関東での患者報告数が多くあがっています。梅毒は年代問わず広がっている感染症ですので、正しい知識をもち、少しでも心当たりがある場合は皮膚科を受診しましょう。
梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。
早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。
引用:国立感染症研究所「IDWR 2021年第43号<注目すべき感染症> 手足口病・ヘルパンギーナ」
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏