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 2022年第9週時点で、全国の梅毒の累積患者報告数は、過去10年で最多となっています。

 昨年の第9週の累積患者報告数は946人でしたが、2022年第9週の時点では1,587人です。年間の患者報告数が過去最多となった昨年を大きく上回っています。

感染症の専門医は

 感染症専門医の大阪府済生会中津病院の安井良則医師に、梅毒についてお話を伺いました。

 (安井医師)梅毒の患者報告数は、昨年は過去10年で最多の患者報告数でした。今年に入り、昨年同時期を上回る患者報告数となっており、今後の発生動向に注意が必要です。(2022年第9週時点 1,587人)

 特に、関東での患者報告数が多くあがっています。新生活が始まる時期ということもあり、開放的な気持ちになるかもしれませんが、梅毒は年代問わず広がっている感染症ですので、気をつけましょう。

地域別 累積患者報告数が多い順(2022年第9週時点)

・東京都(473人)
・大阪府(161人)
・愛知県(100人)
・神奈川県(70人)
・埼玉県(63人)

梅毒とは

 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。

 早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。

梅毒の主な症状

 感染したあと、経過した期間によって、症状の出現する場所や内容が異なります。

<第T期:感染後約3週間>
 初期には、感染がおきた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。痛みがないことも多く、治療をしなくても症状は自然に軽快します。

 しかし、体内から病原体がいなくなったわけではなく、他の人にうつす可能性もあります。感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められます。

<第U期:感染後数か月>
 治療をしないで3か月以上を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹が出ることがあります。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」とよばれています。

 発疹は治療をしなくても数週間以内に消える場合があり、また、再発を繰り返すこともあります。しかし、抗菌薬で治療しない限り、病原菌である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。

 アレルギー、風しん、麻しん等に間違えられることもあります。この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器の障害につながることがあります。

<晩期顕性梅毒(感染後数年)>
 感染後、数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。

 現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、晩期顕性梅毒に進行することはほとんどありません。

 また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)。

引用:国立感染症研究所「梅毒とは」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏