半年以上前に更新された記事です。
寒さが増す季節となってきました。気になるのが、「溶連菌感染症」の感染者数の動向です。
国立感染症研究所によると、患者報告数は、39週(9/27~10/3)から、やや増加の兆しを見せています。
例年、6~7月頃と、12月に流行のピークを迎えます。2021年は、これまで夏場に大きな流行は無く、感染者数も低調でした。
しかし、長崎県や鳥取県では警報レベルではないものの、第41週(10/11~17)では感染者数が伸びています。今後の患者報告の動向に注意が必要です。
感染症専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する安井良則医師に、お話を伺いました。
きょうだい間や学校での集団生活で感染のおそれ
(安井医師)溶連菌感染症は、主に幼稚園や保育園の年長から小学校低学年で流行します。例年、6~7月と12月にピークを迎え、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意が必要です。
一方、感染した場合でも発病しないケースもあり、集団の中で保菌したまま、周囲に感染を広げてしまう場合もあります。そのため、幼稚園や保育園、小学校などで一度、流行が始まると押さえにくい傾向があります。
お子さんのいる家庭では、身の回りの流行にも気配りが必要です。
溶連菌については、マイクロ飛沫感染はありませんが、新型コロナウイルス感染症同様、飛沫対策としてのマスク着用や、手指のアルコール消毒をこころがけてください。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)とは
溶連菌感染症は、主にA群溶血性レンサ球菌を病原体とする感染症のことをいいます。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、どの年齢でも起こり得ますが、学童期の小児に最も多くみられます。感染症発生動向調査のデータによると、冬季および春から初夏にかけての、2つの報告数のピークが認められています。
通常、人と人との接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団での感染も多いとされています。感染性は急性期にもっとも強く、その後、徐々に減弱していきます。
症状
感染すると、2日から5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。
感染後の免疫学的機序を介して、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などを引き起こすことが知られています。
※免疫学的機序…体の中には、細菌やウイルスなどに対抗するために免疫反応がありますが、この免疫システムに異常が起こり病気が出現することがあります。 病気の発生に生体の免疫システムが関連している可能性がある場合に、免疫学的機序といいます。
予防方法
主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染した場合、治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。予防のためのワクチンは、まだ実用化されていません。予防には、手洗いなどの手指衛生、マスクの着用など咳エチケットが有効です。
2021年に入り、溶連菌感染症は大きな流行がみられません。一方、過去の統計では、冬場に大きなピークを迎えているため、今後、注意が必要です。
◇感染症・予防接種ナビでは、みなさまからのA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の経験談を募集しています。
引用:国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」
難病情報センター「免疫学的機序とは」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
引用:国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」
難病情報センター「免疫学的機序とは」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏