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 9月に注意してほしい感染症 について、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【No.1】新型コロナウイルス感染症
 これまでのウイルスに比べ感染力が強いデルタ株への置き換わりにより、全国的に感染が拡大しています。

 現在の感染状況で懸念されることが、これまで感染しにくいとされていた、10代以下の子どもによる感染の割合が増加していることです。多くの学校では夏休みが明け、新学期が始まっています。集団生活が再開することで、今後ますます子どもの間で感染が拡がっていくことが予測されます。また、学校での集団感染が発生し、子どもから家庭内にウイルスが持ち込まれるケースも増えると危惧しています。
 
 学校でできる感染対策として、マスク着用や手洗いの励行に加え、教室内ではこまめな換気を行ってください。また、部活動やチームで行うスポーツなど、集団で集まって活動することは極力避け、できればオンライン環境下でのリモート授業にすることが望ましいです。

 そして、何より重要なのが、多くの方がワクチンを接種することです。接種が進んでいるとはいえ、現在の流行の中心である20~30代といった若い世代の接種はじゅうぶんとは言えません。また、ワクチンを接種していても、感染しないわけではなく、周囲にうつさないわけでもありません。ワクチンを接種した後も決して安心しないでください。ワクチン接種に加え、感染対策を徹底することで、ようやくウイルスに立ち向かえるのです。

【No.2】RSウイルス感染症
 国立感染症研究所によると、2021年第29週(7/19~7/25)から患者報告数が減少しています。

 全国的にはピークアウトの兆候がみられますが、四国地方など一部地域では患者報告数が増加傾向です。

 今年は季節外れの流行が続いていますが、例年であれば、冬期に流行のピークをみせることから、引き続き患者発生動向に注意が必要です。

 RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。通常は感染してから2~8日、典型的には4~6日間の潜伏期間を経て発熱、鼻汁などの症状が数日続きます。

 乳期、特に乳児期早期(生後数週間~数カ月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。そのため、乳児期早期のお子さんがいらっしゃる場合には、感染を避けるための注意が必要です。

 発症の中心は0歳児と1歳児です。0歳児と1歳児に日常的に接する人は、RSウイルス感染症の流行時期はもちろんのこと、流行時期でなくても、咳などの呼吸器症状がある場合は飛沫感染対策としてマスクを着用することが大切です。

【No.3】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は小児の集団生活で気をつけてほしい感染症です。

 患者報告数は例年に比べ低く推移していますが、鳥取県では2021年32週(8/9~15)に比べて患者数の伸びが見られるほか、九州地方では福岡県や長崎県、沖縄県でも一定の患者数が報告されています。新学期に伴い登校が再開されている学校もあることから、集団生活の中で感染が拡がる恐れがあります。

 感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。

 主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。子ども同士の接触頻度が高い保育園や小学校などで感染が拡がるケースが多いです。また、家庭内においても兄弟間(姉妹間)で感染することもあります。

 感染の予防には、手洗い、うがい、咳エチケットなどが有効です。

【No.4】腸管出血性大腸菌感染症
 例年、8月から9月にかけて流行のピークを迎えることから、9月も患者発生動向に注意が必要です。

 実際、今年は昨年に比べ、高い水準で患者報告数が推移していることから、引き続き警戒してください。

 腸管出血性大腸菌は感染すると3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後、血便が出るケースもあります(出血性大腸炎)。また、発病者の中には、下痢など最初の症状が出てから5~13日後に、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を発症するといわれています。主に牛や羊などの家畜や他の動物が保菌しており、牛の生肉や生のレバー等を食べると感染してしまう可能性が高くなることから、厚生労働省は、牛レバーや豚肉・豚の内臓(レバーを含む)を生食用として販売・提供することを禁止しています。

 主な感染経路は飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取することや、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。

 腸管出血性大腸菌は中心部まで75℃で1分間以上加熱することで死滅するので、食事の際はしっかりと加熱することが基本です。また焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。

 家庭だけでなく、外食時にお肉を食べる際も、じゅうぶん加熱するようにしましょう。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏