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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、妊婦による感染も多く確認されています。千葉県柏市では、感染し自宅療養していた妊婦が、入院先が見つからず自宅で出産し、新生児が死亡する事例も起きました。

 日本産婦人科学会によると、妊娠中、特に妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると、重症化しやすいとされています。本人のみならず、お腹の赤ちゃんへの影響も考えれば、不安を抱えたまま過ごしている妊婦の方が多いと思います。

 現在、全国的に医療提供体制がひっ迫していることから、妊婦に限らず、限られたベッド数で、症状に応じて自宅療養や宿泊療養(ホテルなど)を余儀なくされています。万が一、妊婦の方が新型コロナウイルスに感染し、自宅や宿泊療養となった場合、どのようなことに気をつけて過ごしたらよいのでしょうか。

学会等の見解 呼吸状態や心拍数がいつもと違うときは迷わず、かかりつけ医に連絡を

 妊婦による感染増加を受け、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は、新型コロナに感染した妊婦が、かかりつけ医や救急搬送が必要な症状の目安を公表しました。

 妊娠中は様々な妊娠に関連した異常は起こりえますし、症状が強くなる方もいます。そのため、新型コロナウイルスに伴う症状に加えて、妊娠に関連した異常な症状がないかについて、十分注意することが大切です。

 新型コロナ感染期間中は健康観察を行い、普段とは異なる症状が現れた場合には、かかりつけの産婦人科医に連絡してほしいと呼びかけています。

【健康観察を行ってほしい、新型コロナウイルス感染症の症状】
・呼吸状態、心拍数や呼吸数の計測
・体温
・パルスオキシメーター(サチュレーションモニター)をお持ちの場合は、酸素飽和度(血液内の酸素の量:SpO2)の計測

【かかりつけの産婦人科医もしくは保健所に連絡してほしい症状】
・1時間に2回以上の息苦しさを感じる時
・トイレに行くときなどに息苦しさを感じるようになった時
・心拍数が1分間に 110 回以上、もしくは呼吸数が 1 分間に 20 回以上
・安静にしていても酸素飽和度が 93-94%から1時間以内に回復しない時(妊娠中は赤ちゃんのために 95%以上の酸素飽和度が必要です)

【かかりつけの産婦人科医に連絡してほしい、妊娠に関連した異常】
・性器出血、破水感、頻回の子宮収縮、胎動減少、強い腹痛など
・その他、助産師さん等からの妊婦健診時に言われた症状

【すぐに救急車を要請してほしい症状】
・息苦しくなり、短い文章の発声も出来なくなった時
・酸素飽和度(SpO2)が 92%以下になった時

専門医の呼びかけ「母子ともに守るためにワクチンの接種をお勧めします」

 大阪で新型コロナ入院患者の診察にあたる、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、妊婦のみならず、新生児への影響から、妊婦が感染することのリスクについて指摘しています。

(安井医師)
 まず、妊婦の方が感染すると、治療をすることができません。加えて妊娠後期は重症化しやすく、最悪の場合、お腹の赤ちゃんを諦めざるを得ないことも考えられます。たとえ出産できたとしても、自然分娩の場合、妊婦のマイクロ飛沫によって、出産に立ち会う病院のスタッフや新生児への感染リスクが高いため、やむなく帝王切開での出産となるケースもあります。

また、妊婦や胎児を感染から守るため、ワクチン接種の必要性について次のように呼び掛けています。

(安井医師)
 お母さんが感染した時のリスクは高く、発症した時に赤ちゃんの命を守れないこともあります。母子ともに守るために、ワクチンの接種をお勧めします。接種については、胎児への影響等も考え、ためらう妊婦の方も多いと思います。
しかし、私の病院でこれまで診てきた、妊婦さんの感染経路の多くは家庭内感染です。妊婦さんを感染から守るためには、妊婦さん自身の接種が最も大切です。

 日本産婦人科学会は、妊婦のワクチン接種について、時期を問わず接種することを勧めています。不安な方、迷っている方は、まず、かかりつけの産婦人科医に相談してみてはいかがでしょうか。

◇感染症予防接種ナビでは、新型コロナウイルスに感染した方や新型コロナワクチンを接種した方からの経験談を募集しています。

引用:日本産婦人科学会・日本産婦人科医会「新型コロナウイルス感染で妊娠中に自宅や宿泊療養(ホテルなど)となられた方へ」
日本産婦人科学会・日本産婦人科医会・日本産婦人科感染症学会「新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第 2 報)」

取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員・安井良則氏