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6月に注意してほしい感染症について、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【No.1】新型コロナウイルス感染症
高齢者へのワクチン接種が本格的に開始されましたが、流行の中心は、まだワクチンを接種していない20~30代であり、ただちに流行を止めるということはできません。また、ワクチンを接種したからといって、必ずしも感染しないわけではなく、ワクチンを接種した人も、引き続き感染対策を続けましょう。
ワクチンは自分や周りの人を守るだけではありません。多くの人がワクチンを接種することで集団免疫が得られ、社会全体を守ることにつながります。
安心して社会経済活動を循環させられる日が来るまで、今しばらく時間がかかると思いますが、それまでは、引き続きマスクの着用や3密の回避など、みなさんにできる感染対策を徹底しましょう。
【No.2】RSウイルス感染症
例年の流行時期とは異なりますが、これから患者報告数が増え、流行状態となる可能性があります。国立感染症研究所が発表している2021年第19週(5/10~5/16)の患者報告数によると、九州や大阪など西日本を中心に、富山・石川など北陸地方でも患者報告数が増えており、今後隣県でも拡がる恐れがあります。特に人口が多い地域で感染が拡がると、及ぼす影響が大きいため、患者発生動向に注意してください。
RSウイルス感染症は特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。主な症状は発熱や咳で、新型コロナウイルス感染症と似ています。
感染経路は飛沫感染や接触感染です。手洗いと消毒による手指衛生のほか、マスクを着用して子どもに接するなど、予防を徹底しましょう。
【No.3】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は小児の集団生活で気をつけてほしい感染症です。例年6~7月が流行の中心となっているため、感染状況の推移に注意が必要です。
感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。
主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。子ども同士の接触頻度が高い保育園や小学校などで感染が拡がるケースが多いです。また、家庭内においても兄弟間(姉妹間)で感染することもあります。
感染の予防には、手洗い、うがい、咳エチケットなどが有効です。
【No.4】咽頭結膜熱
咽頭結膜熱は、別名プール熱とも呼ばれる、急性ウイルス性感染症で、春から夏にかけて流行します。昨年に比べると今年は、例年の流行水準に近いため、今後の患者報告数の推移には注意が必要です。
発熱、咽頭炎、結膜炎の3つが主な症状です。通常感染してからの潜伏期間は5~7日。症状がある期間は3~5日といわれています。
感染経路は、主に接触感染です。原因となるアデノウイルスは感染力が強く、直接接触だけではなく、タオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すりなど、不特定多数の人が触る物を介した間接接触でも感染が拡がります。
感染対策として、最も重要なことは手指の衛生であり、流水・石鹸による手洗いが最も効果的です。
【No.5】手足口病
7月の流行のピークに向け、これから患者報告数が増加してくる可能性があります。昨年は患者報告数が非常に少ない状況でしたが、今年は昨年の水準を超えていることから、今後の患者発生動向に注意が必要です。
手足口病は、エンテロウイルスなどを病原体とする感染症で、流行は夏に集中しています。3日から5日の潜伏期間の後に発症し、口の粘膜・手のひら・足の甲や裏などに、2~3ミリの水疱性の発疹が現れます。
手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育園や幼稚園などの乳幼児施設における流行時の感染予防は、手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏