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 2月に要注意の感染症として「新型コロナウイルス感染症」。例年冬期に流行するインフルエンザや感染性胃腸炎。そして、小児の集団生活で気をつけてほしいA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)について、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

流行の傾向と感染対策

【要注意】新型コロナウイルス感染症
 現在、全国的に感染者数は高止まりの状態が続いています。冬期(1月末から2月にかけて)はコロナウイルス感染症の流行に最も適した季節であり、今後も感染者数の推移に注意が必要です。新型コロナウイルス感染症は主に飛沫などを通して感染すると言われていますが、発症前から発症初期において特に感染力が高いとされています。そのため、たとえ感染していたとしても無症状でマスクを着用していない場合には、飛沫によってウイルスを拡散し、知らない間に市中感染を拡げている恐れがあります。マスクは自分を感染から守るだけでなく、自分からの飛沫によるウイルスの拡散を防ぎ、周りへの感染を拡げない重要な役割りを持っています。たとえ体調に異変を感じていなくても、自分が感染している可能性があることを意識してマスクを着用し、人が集まる場所や行事は極力避けましょう。

【No.1】インフルエンザ
 例年冬期はインフルエンザが流行する時期ですが、今シーズンの国内におけるインフルエンザの感染者数は例年と比べて非常に少ない状態が続いており、いまだ流行開始の兆候が見られません。このまま流行期に入らない可能性も考えられますが、決して油断せず感染者発生の動向については注意が必要です。

 インフルエンザの主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等によって口から発する飛沫感染で、接触感染もあるといわれています。人混みや繁華街への外出は極力控えて、手洗いの徹底や適度な湿度の保持を行い、感染予防に努めましょう。

【No.2】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
 溶連菌感染症は学童期の小児に最も多く、学校などの集団生活で気をつけてほしい感染症です。

 溶連菌感染症に感染すると、2日から5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナウイルス感染症の症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。ワクチンは、まだ実用化されておらず、感染の予防には、手洗い、うがい、咳エチケットなどが有効です。

【No.3】感染性胃腸炎(ノロ・ロタなど)
 ノロウイルス感染症やロタウイルス感染症などウイルスによる感染性胃腸炎は冬期に流行する感染症です。例年と比べて感染者数は低く推移していますが、今後の推移には注意が必要です。

 ノロウイルス感染症もロタウイルス感染症も有効的な治療法がなく、吐き気止めや整腸剤などの薬を使用する対症療法が一般的です。間接的な接触感染によって広範囲に伝搬しやすい特徴があるため、感染予防策として、流水・石鹸による手洗いが重要です。また、ウイルスの正しい対応方法として、感染源である嘔吐物や下痢便の適切な処理にも注意が必要となり、アルコールではなく次亜塩素酸ナトリウム系の消毒剤でなければ効果的な消毒はできません。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏