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 12月に要注意の感染症として「新型コロナウイルス感染症」。例年冬季に流行するインフルエンザとノロウイルス感染症。そして、小児の集団生活で気を付けてほしいA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) と咽頭結膜熱について、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

流行の傾向と感染対策

【要注意】新型コロナウイルス感染症
 12月前半までは、全国的に感染者数が増加する可能性が高いと思われます。また、効果的な対策が講じられなければ、12月後半も増加していくことが考えられます。

【No.1】インフルエンザ
 現時点では、国内のインフルエンザの患者数は例年と比べて非常に少ない状態が続いていますが、これから新型コロナウイルス感染症と同時流行する可能性は否定できません。

 インフルエンザの患者発生の動向については注意が必要です。

【No.2】ノロウイルス感染症
 例年と比べて患者数は低く推移していますが、12月は1年で最も患者数が増加する時期であり、今後の推移に注意が必要です。

【No.3】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
 例年、12月下旬に向けて患者数の増加が見込まれることから、今後の動向に注意が必要です。

【No.4】咽頭結膜熱
 10月中旬以降、患者数の増加傾向が継続しています。例年、流行のピークとなる12月に向け注意が必要です。

 感染症ごとに、更に詳しくみていきましょう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

 発熱・鼻水・のどの痛み・咳などといった、風邪のような症状から始まります。また、頭痛や強い倦怠感などがよく見られる症状です。下痢や味覚・嗅覚障害を伴うことも少なくはありません。症状の続く長さ(期間)については、風邪やインフルエンザと比べて長いという特徴があるようです。

 新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。また、感染拡大を防ぐため、人と人との距離を保つことが重要です。

 10月23日、新型コロナウイルス感染症対策分科会より感染リスクが高まる「5つの場面」として

 【場面1】飲酒を伴う懇親会等
 【場面2】大人数や長時間におよぶ飲食
 【場面3】マスクなしでの会話
 【場面4】狭い空間での共同生活
 【場面5】居場所の切り替わり

が提言されました。

 また、「飲酒の場面も含め、全ての場面でこれからも引き続き守ってほしいこと」として

 ・基本はマスク着用や三密回避。室内では換気を良くして
 ・集まりは、少人数・短時間にして
 ・大声を出さず会話はできるだけ静かに
 ・共用施設の清掃・消毒、手洗い・アルコール消毒の徹底を

が挙げられています。

「感染リスクが高まる5つの場面」がみなさまの生活の中に潜んでいないか、ぜひご覧になってください。(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/teigen_12_1.pdf)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

インフルエンザ

 1~4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続きます。通常は1週間前後の経過で軽快しますが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴です。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染です。他に接触感染もあるといわれています。

 インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。予防接種を受けることで、発症率、重症化率の低減につながると言われています。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト―ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。

インフルエンザ

ノロウイルス感染症

 例年11月に急激に増加し、12月にピークを迎えます。冬季はノロウイルス感染症に注意が必要です。

 主な症状は、はき気、おう吐及び下痢です。通常は便に血液は混じりません。あまり高い熱とならないことが多いです。小児ではおう吐が多く、おう吐・下痢は一日数回からひどい時には10回以上の時もあります。

 感染してから発病するまでの「潜伏期間(せんぷくきかん)」は1~2日と他の感染症と比較して短い方であり、症状の持続する期間も数時間~数日(平均1~2日)と比較的短期間です。

 ノロウイルスは、接触感染によって広範囲に伝搬しやすい特徴があるため、感染予防策として、流水・石鹸による手洗いが重要です。また、ノロウイルスの正しい対応方法として、嘔吐物や下痢便の適切な処理にも注意が必要となり、アルコールではなく、塩素系の消毒剤でなければ効果的な消毒はできません。

ノロウイルス感染症

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

 溶連菌感染症は、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状が現れることは少ないといわれています。症状としては2~5日の潜伏期間を経て、38度以上の発熱と全身倦怠感、のどの痛みによって発症し、しばしばおう吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発しんが広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。症状が疑われる場合は、速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。ワクチンは、まだ実用化されておらず、感染の予防には、手洗い、うがい、咳エチケットなどが有効です。

 発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

咽頭結膜熱

 咽頭結膜熱は、例年、6~7月と12月を中心に流行のピークを迎えます。発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎(結膜充血、眼痛、流涙、眼脂)の3つが主な症状です。通常感染してからの潜伏期間は5~7日。症状がある期間は3~5日といわれています。咽頭結膜熱の感染経路は、主に接触感染です。また、飛沫感染もあります。

 原因ウイルスは、アデノウイルスで、感染力は強力です。直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接接触でも感染が広がります。最も大切な感染対策は、流水・石鹸による手洗いであり、施設やご家庭などで患者が発生している場合は、皆がよく手を触れるものを中心に消毒を行うことも重要な感染対策となります。

咽頭結膜熱

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏