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国立感染症研究所 感染症疫学センター<br />風疹に関する疫学情報 2020年3月18日現在(掲載日:2020年3月24日) 国立感染症研究所 感染症疫学センター
風疹に関する疫学情報 2020年3月18日現在(掲載日:2020年3月24日)
 国立感染症研究所 感染症疫学センターは、2020年3月24日「風疹に関する疫学情報:2020年3月18日現在」を公開しました。その全文を掲載します。

 風疹に関する疫学情報:2020年3月18日現在
 国立感染症研究所感染症疫学センター

2020年第11週の風疹報告数

 2020年第11週(3月9日~3月15日)に4人が風疹と診断され報告された。第1~11週の風疹累積患者報告数は68人となり、第10週の64人から4人増加した(図1、2-1、2-2)。なお、第11週に診断されていても、2020年3月19日以降に遅れて届出のあった報告は含まれないため、直近の報告数の解釈には注意が必要である。

先天性風疹症候群の報告数

 2008年の全数届出開始以降の風疹ならびに先天性風疹症候群の報告数を示す(図3)。2014年の報告以降、先天性風疹症候群の報告はなかったが(http://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/700-idsc/5072-rubella-crs-20141008.html)、2018~2019年の流行で、2019年第4、17、24、44週、2020年第2週に各1人、合計5人が報告された(報告都道府県:福島県1人、埼玉県1人、東京都2人、大阪府1人、推定感染地域:埼玉県1人、東京都2人、神奈川県1人、大阪府1人、性別:男4人、女1人、母親のワクチン接種歴:有り(回数1回、接種年不明、種類不明)2人、不明3人、母親の妊娠中の風疹罹患歴:有り2人、不明2人、無し1人)。

2013年以降の風疹報告数

 2013年(14,344人)の流行以降、2014年319人、2015年163人、2016年126人、2017年91人と減少傾向であったが(図2-1,2-2,3)、2018年は2,946人、2019年は2,306人が報告され、2020年は第11週時点で68人が報告された(図1,2-1,2-2,3)。

地域別報告数

 地域別には東京都(20人:第10週から2人増加)が最も多く、愛知県(7人:第4週から増加なし)、兵庫県(6人:第10週から1人増加)、千葉県(5人:第8週から増加なし)、神奈川県(5人:第10週から増加なし)から5人以上が報告された(図4、7)。第11週は上記都道府県以外に、複数報告された道府県はなかった(図5)。人口100万人あたりの患者報告数は全国で0.5人であり、三重県が2.2人で最も多く、次いで東京都が1.5人、佐賀県が1.2人、兵庫県が1.1人、香川県1.0人が続いた(図6)。関東地方からの報告数が34人(50%)で最も多いが、近畿地方から13人(19%)、中部地方から11人(16%)、中国・四国地方から4人(6%)、九州地方から4人(6%)、北海道・東北地方から2人(3%)報告された(図4,7)。

症状(重複あり)

 多い順に発疹66人(97%)、発熱61人(90%)、リンパ節腫脹28人(41%)、結膜充血27人(40%)、咳22人(32%)、鼻汁18人(26%)、関節痛・関節炎15人(22%)、血小板減少性紫斑病0人(0%)、脳炎0人(0%)であった。その他として頭痛が1人、咽頭痛・倦怠感・吐気が1人報告された。発熱、発疹、リンパ節腫脹の3主徴すべてがそろって報告されたのは25人(37%)であった。

検査診断の方法(重複あり)

 血清IgM抗体の検出が42人(62%)と最も多かった。次いでPCR法によるウイルス遺伝子の検出が28人(41%)であったが、この内8人については遺伝子型が検査されており、1Eが5人、2Bが1人、型別不能が2人であった。ウイルス遺伝子と血清IgM抗体の両方が検出された者は7人であった。また、麻疹(臨床診断例)として保健所に受理された後、検査診断の結果、風疹(検査診断例)に届出が変更された症例が4人あった。

推定感染源

 推定感染源は、68人中、特に記載がなかった者が47人(69%)と最も多く、不明・不詳・情報なしと記載された者が6人(9%)であった。また、何らかの記載があった男性11人の内、「職場」が7人、この内1人は同じ職場に複数の患者がいると報告された。その他、同じ施設内が1人、同居家族が1人、友人が1人であった。何らかの記載があった女性4人の内、子が1人、直接の接触はないものの夫の職場に複数の患者がいると報告された者が1人あった。

職業

 2018年1月から届出票に追加された職業記載欄では、会社員と記載されていた人が15人(22%)と最も多かった。配慮が必要な職種として医師の報告があった。

年齢・性別

 報告患者の87%(59人)が成人で、男性が女性の3倍多い(男性51人、女性17人)(図8,9,10)。男性患者の年齢中央値は41歳(1~86歳)で、20~40代の男性に多く(男性全体の65%)(図8)、第5期定期接種対象の40~57歳は23人(男性全体の45%)であった。女性患者の年齢中央値は31歳(16~67歳)で、20~30代が多かった(女性全体の71%)(図9)。

予防接種歴

 予防接種歴は、なし(13人:19%)あるいは不明(43人:63%)が82%を占める(図8,9)。また、1回接種歴有り(10人:15%)と報告された者のうち、接種年月日、ロット番号ともに報告されたのは2人、接種年月日のみが報告されたのは4人、接種年月日・ロット番号ともに不明が5人であった。2回接種歴有りと報告された者は2人:3%で、1人は接種年月日のみが報告され、1人は接種年月日・ロット番号ともに不明であった。

推定感染地域

 推定感染地域は国内が45人(66%)と最も多く、国内・国外不明11人(16%)で、国外での感染は11人:(16%:フィリピン7人、タイ3人、インドネシア/フィリピン/ロシア1人)、国内または国外が1人(1%:米国/国内)であった(図11)。

 第5期定期接種風疹第5期定期接種対象の昭和37(1962)年4月2日~昭和54(1979)年4月1日生まれの男性(図12)は、積極的に風疹抗体検査を受け、検査結果に応じて予防接種を受けることが勧奨されている。

<※本文に添付の図は、出典先のpdfをご覧ください>
▼出典 国立感染症研究所 感染症疫学センター 「風疹に関する疫学情報:2020年3月18日現在」2020年3月24日掲載