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国立感染症研究所 感染症疫学センターは、2020年3月10日「風疹に関する疫学情報:2020年3月4日現在」を公開しました。その全文を掲載します。
風疹に関する疫学情報:2020年3月4日現在
国立感染症研究所感染症疫学センター
2020年第9週の風疹報告数
2020年第9週(2月24日~3月1日)に5人が風疹と診断され報告された。遅れ報告も含めると、第1~9週の風疹累積患者報告数は56人となり、第8週の49人から7人増加した(図1、2-1、2-2)。なお、第9週に診断されていても、2020年3月5日以降に遅れて届出のあった報告は含まれないため、直近の報告数の解釈には注意が必要である。先天性風疹症候群の報告数
2008年の全数届出開始以降の風疹ならびに先天性風疹症候群の報告数を示す(図3)。2014年の報告以降、先天性風疹症候群の報告はなかったが(http://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/700-idsc/5072-rubella-crs-20141008.html)、2018~2019年の流行で、2019年第4、17、24、44週、2020年第2週に各1人、合計5人が報告された(報告都道府県:福島県1人、埼玉県1人、東京都2人、大阪府1人、推定感染地域:埼玉県1人、東京都2人、神奈川県1人、大阪府1人、性別:男4人、女1人、母親のワクチン接種歴:有り(回数1回、接種年不明、種類不明)2人、不明3人、母親の妊娠中の風疹罹患歴:有り2人、不明2人、無し1人)。2013年以降の風疹報告数
2013年(14,344人)の流行以降、2014年319人、2015年163人、2016年126人、2017年91人と減少傾向であったが(図2-1,2-2,3)、2018年は2,946人、2019年は2,306人が報告され、2020年は第9週時点で56人が報告された(図1,2-1,2-2,3)。地域別報告数
地域別には東京都(14人:第8週から2人増加)が最も多く、愛知県(7人:第4週から増加なし)、千葉県(5人:第8週から増加なし)、神奈川県(4人:第2週から増加なし)、三重県(4人:第8週から1人増加)、兵庫県(4人:第8週から2人増加)、埼玉県(3人:第8週から1人増加)、大阪府(3人:第8週から増加なし)、北海道(2人:第3週から増加なし)、から複数報告された(図4、7)。第9週は上記都道府県以外に、複数報告された府県はなかった(図5)。人口100万人あたりの患者報告数は全国で0.4人であり、三重県が2.2人で最も多く、次いで佐賀県が1.2人、東京都が1.0人、香川県が1.0人、愛知県が0.9人が続いた(図6)。関東地方からの報告数が27人(48%)で最も多いが、近畿地方から11人(20%)、中部地方から10人(18%)、中国・四国地方から4人(7%)、北海道・東北地方から2人(4%)、九州地方から2人(4%)報告された(図4,7)。症状(重複あり)
多い順に発疹54人(96%)、発熱50人(89%)、リンパ節腫脹25人(45%)、結膜充血23人(41%)、咳17人(30%)、鼻汁14人(25%)、関節痛・関節炎11人(20%)、血小板減少性紫斑病0人(0%)、脳炎0人(0%)であった。その他として頭痛が1人、咽頭痛・倦怠感・吐気が1人報告された。発熱、発疹、リンパ節腫脹の3主徴すべてがそろって報告されたのは23人(41%)であった。検査診断の方法(重複あり)
血清IgM抗体の検出が33人(59%)と最も多かった。次いでPCR法によるウイルス遺伝子の検出が25人(45%)であったが、この内6人については遺伝子型が検査されており、1Eが4人、2Bが1人、型別不能が1人であった。ウイルス遺伝子と血清IgM抗体の両方が検出された者は6人であった。また、麻疹(臨床診断例)として保健所に受理された後、検査診断の結果、風疹(検査診断例)に届出が変更された症例が3人あった。推定感染源
推定感染源は、56人中、特に記載がなかった者が40人(71%)と最も多く、不明・不詳・情報なしと記載された者が5人(9%)であった。また、何らかの記載があった男性10人の内、「職場」が7人、この内1人は同じ職場に複数の患者がいると報告された。その他、同じ施設内が2人、友人が1人であった。何らかの記載があった女性4人の内、直接の接触はないものの夫の職場に複数の患者がいると報告された者が1人あった。職業
2018年1月から届出票に追加された職業記載欄では、会社員と記載されていた人が12人(21%)と最も多かった。配慮が必要な職種の報告はなかった。年齢・性別
報告患者の89%(50人)が成人で、男性が女性の3倍多い(男性42人、女性14人)(図8,9,10)。男性患者の年齢中央値は38歳(1~78歳)で、20~40代の男性に多く(男性全体の71%)(図8)、第5期定期接種対象の40~57歳は20人(男性全体の48%)であった。女性患者の年齢中央値は31.5歳(20~67歳)で、20~30代が多かった(女性全体の79%)(図9)。予防接種歴
予防接種歴は、なし(8人:14%)あるいは不明(38人:68%)が82%を占める(図8,9)。また、1回接種歴有り(9人:16%)と報告された者のうち、接種年月日、ロット番号ともに報告されたのは1人、接種年月日のみが報告されたのは3人、接種年月日・ロット番号ともに不明が5人であった。2回接種歴有りと報告された者は1人:2%で、接種年月日のみが報告された。推定感染地域
推定感染地域は国内が39人(70%)と最も多く、国内・国外不明9人(16%)で、国外での感染は8人:(14%:フィリピン6人、タイ2人)であった(図11)。第5期定期接種
風疹第5期定期接種対象の昭和37(1962)年4月2日~昭和54(1979)年4月1日生まれの男性(図12)は、積極的に風疹抗体検査を受け、検査結果に応じて予防接種を受けることが勧奨されている。対象者に対しては、市町村からクーポン券が送付されるが、まず1年目(2019年度)は、昭和47(1972)年4月2日~昭和54(1979)年4月1日生まれの男性にクーポン券が送付される。厚生労働省の発表(2020年1月7日)によると、2019年度にクーポン券を発送予定の約646万人のうち、4~11月に抗体検査を受けた人が978,422人(クーポン券発送予定者の約15.1%)、4~11月に予防接種を受けた人は197,572人であった(クーポン券発送予定者の約3.1%)。各都道府県別のクーポン券使用者数を下記に示す(図13,図14)。クーポン券を使用した抗体検査実施率が高かった上位5自治体は長野県、栃木県、富山県、静岡県、山形県であった(図15)。なお、クーポン券が未送付であっても、市町村に希望すれば、クーポン券を発行し抗体検査を受検できる。風疹抗体検査・風疹第5期定期接種受託医療機関については厚生労働省のホームページ(「風しんの追加的対策について」)を参照のこと。風疹はワクチンで予防可能な感染症である。
<※本文に添付の図は、出典先のpdfをご覧ください>
▼出典 国立感染症研究所 感染症疫学センター 「風疹に関する疫学情報:2020年3月4日現在」2020年3月10日掲載
▼出典 国立感染症研究所 感染症疫学センター 「風疹に関する疫学情報:2020年3月4日現在」2020年3月10日掲載