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 3月に注意してほしい感染症

【No1】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)…中国国内において流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本国内においても患者発生数の増加が見られています。しかし、現時点ではまだ大規模な感染拡大が認められている地域はありません。いま私たちが行うべきことは、新型コロナウイルス感染症について正しい知識を持ち、その感染拡大防止に努めることです。

【No2】インフルエンザ…今シーズンはそれほど患者数は多くない状態であり、患者発生数は減少傾向が続いていますが、まだ流行は継続しており、3月も注意が必要です。

【No3】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)…2月以降も例年よりも患者発生数が多い状態が続いています。学校の春休みが始まる頃までは、患者数の増加がみられることが多いです。特に、幼稚園・保育園・小学校など、乳幼児・小児の集団生活施設においては、溶連菌感染症の集団発生にご注意ください。

【No4】ヒトメタニューモウイルス感染症…ヒトメタニューモウイルス感染症の流行時期は、例年3〜6月とされています。大部分は症状が出ないか、いわゆる「かぜ」の症状ですが、乳幼児、高齢者などでは、酸素投与が必要な肺炎となることも珍しくありません。RSウイルスと同様に感染力が強く、感染経路は飛沫感染と接触感染であるといわれており、予防には手洗いなどの手指衛生が重要です。

 感染症ごとに、更に詳しくみていきましょう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

 主な感染経路は、飛沫感染および接触感染であり、その予防対策としては、咳エチケットと手洗いやアルコールなどによる手指衛生が最も重要であることに変わりありません。また、国の専門家会議によると、これからの1〜2週間によって、急速に流行が拡大するか、あるいは収束していくかの分かれ目であると言われています。不特定多数の人が集まる場所に不用意に行かないことはもちろんですが、自分が発熱や呼吸器症状をきたしている場合は、たとえ症状が比較的軽度であっても、職場や学校など長時間にわたって特定の人と接する場所に行くことをやめ、自宅で休むことを心がけてください。

 コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。咳エチケットは、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。原則として空気感染はありません。

 新型コロナウイルス感染症に感染し発病した場合、大半の例では軽症または中等症までで治っていくと言われています。一方、高齢の方や、糖尿病や呼吸器疾患などの基礎疾患を持った方々は、重症化する場合があると言われています。これからは、重症化する可能性のある方々ができる限り感染しないように守り、万が一感染・発病した場合は、すぐに適切な医療が受けられるようにすることが重要となります。

 厚生労働省は、2020年2月17日に文書「新型コロナウイルスを防ぐには」を公開しました。手洗いやアルコール消毒といった手指衛生と、咳エチケットが重要で、持病がある人や高齢の人は、できるだけ人混みの多い場所を避けるといった注意喚起がされています。また、発熱等の風邪の症状が見られるときは、学校や会社を休むよう促しています。厚生労働省のホームページの「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」を参照していただき、新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合は、帰国者・接触者相談センターに相談して下さい。そのうえで、必要があると認められた場合は、専門の医療機関(帰国者・接触者外来)が紹介されます。これらのことが大切な理由は、日本国内における新型コロナウイルス感染症の流行を抑制し、たとえ流行が抑えられなくなっても、流行の開始・ピークを少しでも遅らせることによって、医療機関に患者が殺到して地域の医療体制が崩壊したり、重症者に十分な医療が行き届かなくなることによって亡くなってしまう人が増加することを防ぐためです。過度に心配しパニックになることなく、これらの情報を正しく理解し、自身の感染予防と万が一の際の適切な行動につなげることが、いま最も大切です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

インフルエンザ

 1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続きます。通常は1週間前後の経過で軽快しますが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴です。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染です。他に接触感染もあるといわれています。

 インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。予防接種を受けることで、発症率、重症化率の低減につながると言われています。インフルエンザの感染対策とてしては、飛沫感染対策として、咳エチケット。接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト―ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。

インフルエンザ

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

 溶連菌感染症の症状が疑われる場合は、速やかにかかりつけ医を受診しましょう。溶連菌感染症と診断され、抗菌薬が処方された場合は、医師の指示に従うことが重要です。途中で抗菌薬をやめた場合、病気の再燃や糸球体腎炎などの合併症を来すことが知られています。

 溶連菌感染症は、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状が現れることは少ないといわれています。症状としては2〜5日の潜伏期間を経て、38度以上の発熱と全身倦怠感、のどの痛みによって発症し、しばしばおう吐を伴います。

 また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発しんが広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、十分な抗菌薬の投与による治療をおこなわないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などを引き起こすことが知られています。

 主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です。物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが、患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です。発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

ヒトメタニューモウイルス感染症

 ヒトメタニューモウイルス感染症の症状は、すべての年齢層で鼻炎、咽頭炎、副鼻腔炎などの上気道炎から、気管支炎、細気管支炎、肺炎などの下気道炎まで引き起こしますが、大部分は症状が出ないか上気道炎、いわゆる「かぜ」の症状です。乳幼児、高齢者などでは、呼吸困難になることもあり、酸素投与が必要な肺炎となることも珍しくありません。重症化する場合は、高熱が持続し、息がゼイゼイと呼吸が苦しそうになる呼吸器症状が出ます。潜伏期間は4〜6日といわれています。
流行時期は例年3〜6月とされていて、母体からの移行抗体が消失していく生後6か月頃の乳児より感染が始まり、2歳までに約50%、10歳までにはほぼ全員が感染すると考えられています。小児のみでなく成人(特に高齢者)においても重要なウイルスです。1度の感染では十分な免疫を獲得できず、何度も再感染を繰り返していきます。

 ヒトメタニューモウイルスは、RSウイルスと同様に感染力が強く、感染経路は飛沫感染と接触感染であるといわれています。ウイルスの量は発熱後1〜4日で多く、感染者からのウイルスの排泄は1〜2週間持続するといわれています。一方、軽症例では軽い咳や鼻汁程度の症状のため,保育所に通常どおり通っている場合が多く、 幼稚園、保育園など乳幼児の集団生活施設等で効果的な感染対策を行うことは困難であると言わざるを得ません。

 ヒトメタニューモウイルス感染症の予防には、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策の基本である手指衛生が重要です。ヒトメタニューモウイルスの抗ウイルス薬はなく、ワクチンも存在しないため、治療はすべて急性期の症状の重症度に応じた対症療法が基本となります。特に、脱水、呼吸困難、細菌の2次感染に注意が必要です。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏