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図:感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症を含む)<br />(第43週) 監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏 図:感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症を含む)
(第43週) 監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
 例年ノロウイルス感染症の流行のピークは12月であり、11月は流行のピークに向かって患者発生数が大きく増加する時期です。今後、保育園・幼稚園・小学校などの小児の集団生活施設や高齢者施設において、ノロウイルス感染症の集団発生が全国各地で起きるものと予想されます。ノロウイルスは感染力が極めて強く、経口感染に注意するとともに、接触感染対策として、流水・石鹸による手洗いの徹底やおう吐物・下痢便の適切な処理などが重要です。

<感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症を含む)について>

患者数の動向

 IDWRの速報データによると
 2019/10/7~10/13(第41週)は、定点把握疾患(週報告)が9453件(3)
 2019/10/14~10/20(第42週)は、定点把握疾患(週報告)が8829件(2.8)
 2019/10/21~10/27(第43週)は、定点把握疾患(週報告)が9282件(2.93)

地域別情報

 10月21日~10月27日(第43週)の速報データによる、定点当たり報告数が最も多い順
 島根県(7.65)
 熊本県(6.62)
 大分県(5.75)
 愛媛県(4.97)
 群馬県(4.85)

 ノロウイルス感染症を主な病原体とする感染性胃腸炎の患者数は、例年11月頃から患者発生件数は増加しはじめ、ピークは12月中となることが多いです。

 ノロウイルス感染症は、接触感染を防ぐための流水・石鹸による手洗いが効果的ですが、おう吐物などの適切な処理もとても重要です。対処法を解説します。

症状

 1~2日の潜伏期間を経て、吐き気、おう吐、下痢などの症状が出ます。症状は数時間から数日でおさまり、よぼどのことがない限り重症化することはありません。

感染経路

 以前は、食中毒としての経口感染がよく知られていましたが、患者や無症状病原体保有者との直接もしくは間接的接触による接触感染や、患者のおう吐物や下痢便を介した飛沫感染等のヒト-ヒト感染があります。その感染力は非常に強いものです。

意外な感染経路

 ノロウイルス感染症の意外な感染源が、舞い上がったホコリです。おう吐物や下痢便に対して適切な処理をしない場合、その場所に残存しているノロウイルスがホコリとともに舞い上がって、その日だけでなく、数日を経てもその場所を歩いただけの人がそのノロウイルスを吸い込んで感染してしまうことがあります。

対処法

 ノロウイルスに関係していると考えられるおう吐物や下痢便を発見した場合には、しっかりとペーパータオル等で拭き取り、取り除いたあとの場所を塩素系の消毒剤でしっかりと消毒することが大切です。

<処理のしかた>
1.おう吐物や下痢便の処理をする時には、マスク、手袋、ゴーグルなどをして、直接ウイルスが体につかないようにしましょう。

2.処理をする人以外を近づけないようにしましょう。

3.おう吐物や下痢便をペーパータオルなどでよく拭き取り、ビニール袋に入れて密封してから捨てましょう。

4.汚物を取り除いた後の床には、まだノロウイルスが残っているので塩素系消毒薬で消毒する。家庭用の塩素系漂白剤の原液を水で薄めたもので消毒剤ができます。(500mlのペットボトルに水を入れて、キャップ1杯の原液を加えると、およそ100倍に希釈した消毒液がでます。塩素濃度約200ppm)

5.汚物のあった場所を中心に広い範囲を消毒します。ノロウイルス感染症を発症されている方は体のあちこちにウイルスが付着しているのでドアノブ、階段の手すり、トイレの便座なども塩素系の消毒剤でこまめに拭きとり消毒しましょう。

6.タオルは別々に使いましょう。

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監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏