5月に注意してほしい感染症

【No1】咽頭結膜熱…別名プール熱とも呼ばれ、例年ゴールデンウイーク明けから本格的な患者数の増加が見られています。アデノウイルスを原因とする感染症で、感染力は極めて強いです。流行期間中はご注意ください。

【No2】RSウイルス感染症…昨年よりも流行開始時期が早まる可能性があります。5月も注意が必要です。

【No3】ロタウイルス感染症…4〜5月は、1年で最もロタウイルス感染症の患者数が増加する時期です。特に乳幼児の育児・医療に携わる方々は注意が必要です。

【No4】手足口病…5月のゴールデンウイーク明けから患者数が本格的に増加していきます。2019年は前年よりも患者数が大幅に増加する可能性があり、要注意です。

 感染症ごとに、更に詳しくみていきましょう。

咽頭結膜熱(プール熱)

 例年4月から患者数が増加し、6〜7月に流行のピークを迎えます。咽頭結膜熱は、別名プール熱とも呼ばれています。例年、流行のピークは6月です。発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎(結膜充血、眼痛、流涙、眼脂)の3つが主な症状です。通常感染してからの潜伏期間は5〜7日。症状がある期間は3〜5日といわれています。咽頭結膜熱の感染経路は、主に接触感染です。また、飛沫感染もあります。

 原因ウイルスは、アデノウイルスで、感染力は強力です。直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接接触でも感染が広がります。

 アデノウイルスは、環境中で数日間活性を保っているため、施設やご家庭などで患者が発生している場合は、皆がよく手を触れるものを中心に消毒を行うことも重要な感染対策となります。

 なお、プール熱という名前の方が一般的に知られるようになり、プールに入ったら感染してしまうなどというイメージを持っている方もいらっしゃいますが、残留塩素濃度の基準を満たしているプールの水を介して感染することはほとんどありません。

咽頭結膜熱

RSウイルス感染症

 RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスが伝播することによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2〜8日、一般的には4〜6日で発症します。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなったり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。

 特に気をつけなければならないのが、生後数週間から数か月の赤ちゃんがRSウイルスに感染することです。感染すると、気管支炎、肺炎などを起こすことがあり、1〜3%が重症化すると言われています。RSウイルス感染症の感染経路はインフルエンザと同様、飛沫感染や接触感染です。RSウイルス感染症のワクチンはまだ実用化されていません。予防法は、手洗い、咳エチケットなどが有効です。RSウイルス感染症には特効薬はありません。治療は症状を和らげる対症療法になります。

RSウイルス感染症

ロタウイルス感染症

 ほとんどすべての子どもが4〜5歳までに感染します。初感染であれば新生児期を除いて不顕性感染(感染していながら臨床的に確認しうる症状を示さず健康にみえる状態)はまれです。生後6か月以降2歳未満の時期に感染するともっとも重症化しやすいといわれており、入院治療を必要とする乳幼児下痢症の35〜52%がロタウイルスによるものです。

 かかりやすいのは乳幼児で、特に1歳児に多く、年齢が上がるにつれだんだんと減っていきます。脱水などのために入院治療が必要となるのはほとんどが就学前(6歳以下)の乳幼児で、2歳未満児(ただし、3か月以上)が過半数を占めます。生涯をとおしてロタウイルス感染は繰り返し起こりますが、一般に年長児や成人は不顕性感染となります。

 従来、12〜1月に流行し、冬季下痢症と呼ばれてきましたが、最近の日本での流行のピークは3〜5月となっています。初冬(11月〜1月)に流行するノロウイルス感染症とれ替わるようにロタウイルスの流行がみられ、ウイルス性胃腸炎として二峰性のピークを示すことが最近の日本での流行の特徴です。

ロタウイルス感染症

手足口病

 手足口病は、主に夏季に流行する感染症で、例年7月頃に流行のピークを迎えています。年齢別にみると5歳以下が流行の中心であり、感染症発生動向調査の小児科定点医療機関からの報告によると、2歳以下からの報告数が全体の約半数を占めています。

 従来のCA16およびEV71による手足口では、3〜5日間の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現してきます。発熱は約3分の1に認められますが軽度であり、高熱が続くことは通常はありません。通常は3〜7日の経過で軽快し、水疱の跡が痂皮(かさぶた)となることもありません。

 一方、近年みられるようになったCA6による手足口病では、水疱が5mm程度と大きく、四肢末端に限局せずに前腕部から上腕部、大腿部から殿部と広範囲に認められ、発熱も39℃を上回ることも珍しくなく、水痘との鑑別が困難な例もあります。また、手足口病を発症して治癒した後に、数週間を経て上下肢の爪が脱落する爪甲脱落症をきたす場合があり、CA6を原因とする手足口病の特徴となっています。感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての流行時の感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。

手足口病

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏