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2019年の8月に注意してほしい感染症についてはこちらから

8月に注意してほしい感染症

【No1】RSウイルス感染症…7月から急激な増加がはじまっています。8月には、昨年と同様に本格的な流行となる可能性が高いと思われます。特に乳幼児の育児に関わる方は、注意が必要です。

【No2】腸管出血性大腸菌感染症…患者報告数の増加が続いています。例年、8月~9月にかけて流行のピークとなっています。今月は、患者報告数の増加に注意が必要です。

【No3】へルパンギーナ…7月に流行のピークを迎え、8月も患者数が多い状態が続くものと予想されます。

【要注意】梅毒…2010年~2017年までの7年間で患者数が9倍に増加しています。

 2017年は、2000年以降最多の患者数となりました。

 2018年は、(2018/7/16~7/22)29週までに3686人(暫定値)となっており、このままでは、昨年の患者数を更に上回る可能性があります。特に注意しなければならないのは若年層です。特に20代の女性の患者数の急増がみられており、このままでは、先天梅毒(※)の増加が危惧されます。

 ※先天梅毒:妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります。

 感染症ごとに、更に詳しくみていきましょう。

RSウイルス感染症

 7月から急激な増加がはじまっています。8月には、昨年と同様に本格的な流行となる可能性が高いと思われます。特に乳幼児の育児に関わる方は、注意が必要です。

 RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスが伝播することによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなったり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。

 生後6か月未満の乳児で特に注意してほしい症状として、粘っこい鼻水による鼻づまりの症状が非常に強くなることがあります。3か月未満の乳児は、口呼吸ができていません。鼻で呼吸をしているために、粘っこい鼻水が詰まっただけでも苦しくなります。そして更に、ミルクやおっぱいを飲む時に口もふさがってしまうと呼吸がしにくい状態となります。保護者の方は、乳児がおっぱいの飲みが悪くなったなどの変化を注意深く観察しましょう。

 RSウイルス感染症の予防法は、手洗い、咳エチケットなどが有効ですが、乳幼児自身が予防することは難しいです。そのため、咳などの症状がある年長児や大人には、0歳児、1歳児のお世話はすすめられません。しかしながら、お世話をしなければならないときは、手洗いやマスクの装着などで乳幼児に感染させないように気をつけましょう。

RSウイルス感染症

腸管出血性大腸菌感染症

 患者報告数の増加が続いています。例年、8月~9月にかけて流行のピークとなっています。今月は、患者報告数の増加に注意が必要です。

 腸管出血性大腸菌感染症は、感染後3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後で血便となります(出血性大腸炎)。発熱は軽度です。血便は、初期段階では、少量の血液の混入で始まりますが、次第に血液の量が増加し、典型例では血液そのもののような状態となります。発病者の6~9%では、下痢などの最初の症状が出てから5~13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。HUSを合併した場合の致死率は3~5%といわれています。

<感染経路と対策1>
 主な感染経路は、腸管出血性大腸菌によって汚染された食材や水分を経口摂取することによる経口感染です。例年、腸管出血性大腸菌の感染者の報告数は、0~4歳児が最多です。5~9歳がこれに次いで多い状況です。感染後の発症率も9歳以下は80%前後と高くなっています。牛の生肉や生レバーなどの内臓は、腸管出血性大腸菌の感染の可能性があるので食べるべきではありませんが、特に保育所に通っている年齢群の乳幼児では厳禁です。高齢者や乳幼児と日常的に接触する職業や立場の人(家庭も含めて)、あるいは免疫力の低下した人と接触する職業・立場の人は厳に慎むべきです。

<感染経路と対策2>
 腸管出血性大腸菌は75℃で1分間加熱で死滅するので、乳幼児への食事はしっかりと加熱したものを供することが基本です。また焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと必ず使い分けましょう。過去の事例として野菜類(生野菜はもとより浅漬けなど)やそれ以外の加工食品(最近ではお団子の食中毒)での集団発生がありました。

腸管出血性大腸菌感染症

へルパンギーナ

 7月に流行のピークを迎え、8月も患者数が多い状態が続くものと予想されます。

 ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎です。乳幼児を中心に夏季に流行する、いわゆる夏かぜの代表的疾患です。特異的な予防法はありませんが、感染者との密接な接触を避けること、流行時に手指の消毒を励行することなどがあります。ヘルパンギーナの症状の大部分は軽症疾患で、登校登園については手足口病と同様、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきであると考えられます。

へルパンギーナ

梅毒

 2010年~2017年までの7年間で患者数が9倍に増加しています。2017年は、2000年以降最多の患者数となりました。2018年は、(2018/7/16~7/22)29週までに3686人(暫定値)となっており、このままでは、昨年の患者数を更に上回る可能性があります。特に注意しなければならないのは、若年層です。20代の女性の患者数の急増がみられており、このままでは、先天梅毒(※)の増加が危惧されます。※先天梅毒:妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります。

 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。

 早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。

梅毒

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏