情報元:IDWR2015年第31週(2015年7月27日~2015年8月2日)監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏 情報元:IDWR2015年第31週(2015年7月27日~2015年8月2日)監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
 昨年ピーク時には2003年の調査開始以降、最多の報告数となったRSウイルス感染症。8月に入って報告数の増加がみられており、9月以降本格的な流行となる可能性が高く注意が必要です。

速やかにかかりつけ医へ行く症状

 息がゼイゼイと呼吸が苦しそうになる。咳で何回も夜中に起きる。熱が下がっても症状が改善されない。咳込んで嘔吐してしまう。
生後1か月未満でも感染する可能性があり、無呼吸の原因になることがある。※悪化するときには、発熱はあまり関係ありません。

症状

 潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされています。発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日間続き、初感染の小児の20~30%では、その後、下気道症状があらわれると言われています。感染が下気道、とくに細気管支に及んだ場合には特徴的な病型である細気管支炎となります。
 細気管支炎は、炎症性浮腫と分泌物、脱落上皮により細気管支が狭くなるに従って、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などがあらわれます。痰(たん)の貯留により無気肺を起こすことも珍しくありません。心肺に基礎疾患を有する小児では、しばしば遷延化・重症化します。
 発熱は、初期症状として普通に見られますが、呼吸状態の悪化により入院が必要となったときには、体温は38℃以下や平熱となっている場合が多いです。
 RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告もあります。また、低出生体重児や心肺系に基礎疾患や免疫不全が存在する場合は重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きいです。

重篤な合併症

 重篤な合併症として注意してほしいものは、無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症等があります。
 平成24年の人口動態統計によると、日本国内のRSウイルス感染症による死亡数は、2008~2012年の5年間で、年平均31.4人(28~36人)と報告されています。米国では年間400例ほどの小児がRSウイルス感染症により死亡していることが推察されています。

感染経路

 飛沫感染と接触感染です。感染力が強く、また生涯にわたって何度も顕性感染を繰り返すといわれています。年長者の再感染例等では典型的な症状があらわれず、RSウイルス感染と気付かれない軽症例も多数存在することから、家族間の感染や乳幼児の集団生活施設等での流行を効果的に抑制することは困難である場合が多いです。


監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2015/8/21