春休みに入るため、一時的に患者数が減少すると予想されます。一方、例年の同時期と比べて報告数の高い状態が続いています。最も患者数が増加する6~7月に向けて、長期にわたって、注意が必要です。
次に、A群溶血性レンサ球菌感染症(溶連菌感染症)の症状、治療法、感染経路について解説していきます。
症状
潜伏期間は2~5日であり、その間の周囲への感染性はわかっていません。発症する場合は潜伏期間を経て突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって始まり、しばしば嘔吐を伴います。咽頭壁は浮腫状で扁桃には浸出液を伴っています。軟口蓋に点状出血がみられることがあり、更には特徴的な苺(イチゴ)舌(写真)が認められる場合があります。この苺舌ですが、発症早期には舌は白苔で覆われており、その後白苔が剥離した後で苺舌がみられます。発熱開始後12 ~24 時間すると点状紅斑様、日焼け様の皮疹が出現して猩紅熱と呼ばれる病態を呈することがあります。針頭大の皮疹により、 皮膚が紙ヤスリ様の手触りとなる事が特徴的です。この場合、通常顔面には皮疹はなく、額と頬が紅潮し、口の周りのみ蒼白にみえる(口囲蒼白)と言われています。
治療
治療にはペニシリン系の抗菌薬やセフェム系抗菌薬の投与が推奨されており、投与期間はペニシリン系の場合は10日間、セフェム系の場合は5日間が推奨されています。これまでA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療にはペニシリン系抗菌薬を第1選択薬としてリウマチ熱や糸球体腎炎の合併を予防するために10日間投与することが推奨されてきました。しかし、ペニシリン投与後にも15~20%程度の患者が当初感染した血清型と同じ型のA群溶血性レンサ球菌を保有し続けると言われています。これは投与期間が長期に渡るために服薬のコンプライアンスが不十分となってしまう場合が少なくないこと、周囲からの再感染、咽頭部に常在する他のβラクタマーゼ産生菌の影響、菌が細胞内でも生育できること、患部にバイオフィルムが掲載されていて薬剤が浸透しにくい場合があること、等がその理由としてあげられています。除菌が困難な場合には、βラクタマーゼ阻害薬が配合されたペニシリン系抗菌薬や、セフェム系抗菌薬の10日間投与が推奨されています。また、ペニシリンアレルギーがある場合にはエリスロマイシン等のマクロライド系抗菌薬の投与が行われますが、マクロライド耐性菌である場合があり、慎重な対応が求められます。感染経路
主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です。物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが、患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です。発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2015/3/23
更新:2015/3/23